創薬に懸ける~日本発シーズ、咲くや?咲かざるや?:アビガン創薬物語

実験医学では,2018年8月号に『アビガン創薬物語』と題した記事を掲載しておりました.当時,エボラ出血熱のアウトブレイクでアビガンへの注目が高まるなか,開発者である白木公康先生(千里金蘭大学教授/富山大学名誉教授)にその実像をお語りいただいたものです.あらためていま,アビガンという薬を深く知る必要のある方や,新薬の開発に尽力中の一人でも多くの方に,白木先生の知見をお役立ていただければと考えました.研究者・医療者の皆さまへの深い感謝と応援の気持ちを込め,本記事をウェブ公開いたします.

(編集部)

アビガンとは…

ファビピラビル(Favipiravir,アビガン)のインフルエンザ治療薬としての抗インフルエンザ活性と感染動物での有効性について2000年9月にトロントで開催された第40回米微生物会議(ICAAC)で発表した.現在は,新型または再興型インフルエンザウイルス感染症等を適応症としては流通していない.作用機序はRNAウイルスのRNA依存性RNA合成酵素に共通な必須部分に作用し,chain terminator(伸長阻止剤)として働く.RNA合成酵素の必須部位に作用するので,耐性ウイルスを生じない.流行のはじめから最後まで有効性が保たれる理想的な抗ウイルス薬で,ファビピラビルは米国が考えていたテロや致死性RNA感染症に対する危機管理薬である.さらに,まだ適応症ではないが,エボラ出血熱や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)等の致死性RNAウイルス感染症にも有効性が期待できる薬剤である.

本記事をご覧いただくためには「羊土社HP会員」のご登録が必要です.
サイドメニュー開く