レジデントノート:栄養療法 まずはここから!〜医師として知っておきたい基本事項を総整理、「食事どうしますか?」に自信をもって答えられる!
レジデントノート 2018年11月号 Vol.20 No.12

栄養療法 まずはここから!

医師として知っておきたい基本事項を総整理、「食事どうしますか?」に自信をもって答えられる!

  • 小坂鎮太郎,若林秀隆/編
  • 2018年10月10日発行
  • B5判
  • 170ページ
  • ISBN 978-4-7581-1616-9
  • 定価:2,000円+税
  • 在庫:あり
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特集にあたって

なぜ今,栄養療法か?

小坂鎮太郎1),若林秀隆1,2)
(1 地域医療振興協会 練馬光が丘病院 救急・集中治療科,総合診療科 2 横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科)

栄養療法の重要性


日本は平均寿命も健康寿命も世界トップクラスであり,医療水準が高い国であると自負できます1).一方で,健康寿命と生命寿命の差は10年近くあり,QOLの低下した状態で老年期を過ごす人が多数います2).結果として超高齢社会により増加する社会保障給付費や医療費が,変化の乏しい国民所得を逼迫しているのが現状です(図13)

この日本社会において,入院および慢性疾患の通院患者には栄養不良が多くみられ,特に高齢者では5人に1人以上が低栄養で,合併症や死亡率などが高くなっています4)入院時および通院時に適切な栄養スクリーニングと栄養アセスメントを行い,早期に栄養不良患者に対して適切な栄養療法を行うことで原疾患の治癒促進,感染症の合併症予防といった患者予後を変え,健康寿命を延ばし,医療費を少なくすることが期待できます5〜7)

必要なのに教育が足りていない栄養療法の現実

このように近年,栄養療法のエビデンスは蓄積され,その教育需要が高まっています.一方で,研修医の教育方法や内容については,臨床現場での供給が十分ではない印象を受けます.そこで本特集の依頼を受け,現場での需要と供給の現状,学習内容の要望について,指導医と初期研修医双方の需要を調査し,それに合った学習方法・教材の提供方法を検討しました.

1) 方法

病床を有して診療を行い,初期研修医教育を担っている全国の27病院(14市中病院,13大学病院)の総合診療科/総合内科において,各施設の総合診療科/総合内科のプログラム責任者ないしはそれに準ずる指導医を含む指導医54人,初期研修医(不在時は後期研修医)54人の合計108名にwebベースのアンケート調査を実施しました.設問は5項目で,① 卒後年数,② TNTの受講歴,③ 院内での栄養療法の講義の有無,④ 初期研修期間中の栄養療法教育の需要,⑤ 学習需要のある内容の確認を選択と記載方式で行いました.

2) 結果と考察



アンケートの回収率は指導医78%(42/54名),研修医70%(38/54名)でした.また,TNTの受講者は指導医に23名,研修医に2名いました.1名の研修医を除いてすべての医師が,栄養療法教育は現時点/将来的に必要と回答しましたが(図2),初期研修医の受ける研修内容に栄養療法が入っていると回答したのは32.5%(26/80名)でした(図3).

学習需要項目として,栄養不良のスクリーニングやアセスメント,投与経路や投与量の計算,経腸栄養,静脈栄養,高齢者の栄養,嚥下障害の評価と栄養介入といった項目が60%以上の医師からあげられましたが,逆に生理学的知識や小児の栄養といった項目は50%未満の需要でした.以上の結果を受けて,本特集では学習機会の多くない環境の医師の需要に合わせ,遭遇頻度の多い実践的な項目に絞り,栄養療法のアウトカムを意識して即実践できることを目標に構成を考えました.

本特集の構成と特徴

栄養療法の総論では,すべての患者に対して低栄養かどうかのスクリーニングをかけて,低栄養をプロブレムとして診療録に記載し,どのようにアプローチすればいいかの全体像を提示しました〔「栄養療法の総論:適応と5つの原則に基づく考え方を身につける」(pp.1998〜2007)参照〕.この際に,多職種で栄養療法を行うメリット,高齢者や疾患別栄養療法の最近のトレンドを吉村芳弘 先生よりご説明いただきました〔「高齢者の低栄養と入院中に多職種で行う栄養療法」(pp.2008〜2016)参照〕.そして,今現在ある栄養療法についてのエビデンスについてどのように解釈し,活用すればいいのか元祖Evidence Based Nutrition Therapyの提唱者である佐々木 敏 先生よりご説明いただきました〔「データ栄養学のススメ」(pp.2017〜2025)参照〕.

実践的な内容としては,食事や経口補助栄養剤(ONS)を活用して,経口摂取によってどのようにQOLを上げるかを西岡心大 先生にご説明いただきました〔「食事の工夫と経口栄養補助食品(ONS)の上手な使い分け」(pp.2027〜2036)参照〕.早期からの経腸栄養を活用して予後を改善する,そしてトラブルシューテイングに強くなるために,栄養療法のメッカである近森病院での実践内容を宮澤 靖 先生にご解説いただきました〔「経腸栄養(EN)コトはじめ」(pp.2037〜2048)参照〕.そして静脈栄養の適応と開始の仕方,腸管栄養への移行については重症患者の栄養ガイドラインを作成されている東別府直紀 先生と伊藤次郎 先生にご解説いただきました〔「静脈栄養(PN:TPN,PPN)コトはじめ」(pp.2049〜2062)参照〕.最後に国民全体の問題である嚥下障害をもつ場合の栄養療法についての考え方を,KTバランスチャートを活用した包括的アプローチでご活躍の前田圭介 先生にご説明いただきました〔「嚥下障害をもつ患者の栄養療法」(pp.2063〜2070)参照〕.

また,それぞれの先生には研修医の皆さんがさらに学習するためのオススメの学習方法をコラムに記載していただきました.いずれの項目も私自身が読みたいと思う,栄養療法の研究もされている最前線でご活躍の方々にご執筆いただきました.心からお礼を申し上げます.

読者の皆さんにはどこから読んでいただいても構いません.少しでも低栄養や栄養療法のアウトカム/意義を意識して,1人でも多くの患者さんに提供していただければ幸いです.

  • ※本稿で用いる略語表記について
    • 栄養療法を学ぶにあたり知っておきたい略語についてここに記載しておきます.これを読んだうえで,各原稿を見ていただけると幸いです.
    • 栄養療法についての学会としては,日本静脈経腸栄養学会(Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition:JSPEN),米国静脈経腸栄養学会(American Society for Parenteral and. Enteral Nutrition:ASPEN),欧州臨床栄養代謝学会(European Society for Clinical Nutrition and Metabolism:ESPEN)の3学会が有名でそれぞれのガイドラインは有用な学習資料です.
    • 国内の学習機会としてJSPENがASPENの栄養教育セミナーであるTNT(total nutrition therapy)や,ESPENの生涯学習セミナーLLL(life long learning)を日本語で提供しています.
    • 栄養療法は投与経路によって腸管を用いる経腸栄養(enteral nutrition:EN)と,点滴から投与する静脈栄養(parenteral nutrition:PN)に大別されます.
    • 静脈栄養はさらに静脈ラインの種類によって末梢経腸栄養(peripheral PN:PPN)と中心静脈栄養(total PN:TPN)とに分類されます.
    • TPNは高カロリー輸液(intravenous hyperalimentation:IVH)と呼ばれましたが,現在はTPNを用いるのが一般的です.
    • ENでは通常の食事に経口補助栄養剤(oral nutrition supplementation:ONS)を追加するようなランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)が増えています.
    • 現場での栄養療法提供は栄養サポートチーム(nutritional support team:NST)に相談することで,「栄養サポートチーム加算 200点(週1回)」を得ることが可能です.

文献

  • 「Mortality Amenable to Health Care in 31 OECD Countries」(Gay JG, et al), OECD Publishing, 2011
  • 厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会:健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料. 2012
  • 国立社会保障・人口問題研究所:平成23年度社会保障費用統計. 2013
  • 松田 朗, 他:高齢者の栄養管理サービスに関する研究 : 報告書. 2001
  • S Beattie, et al:Reducing Readmissions with Nutrition Management. IOWA Public Health Association, 2015
  • Nehme AE:Nutritional support of the hospitalized patient. The team concept. JAMA, 243:1906-1908, 1980
  • Gales BJ & Gales MJ:Nutritional support teams: a review of comparative trials. Ann Pharmacother, 28:227-235, 1994

著者プロフィール

小坂鎮太郎 Shintaro Kosaka
地域医療振興協会 練馬光が丘病院 救急・集中治療科,総合診療科
専門:総合診療,救急・集中治療,リハビリテーション栄養,医療の質・安全
Common diseaseから重症・希少疾患まで,幅広く患者QOLの向上に栄養療法は寄与できると考えています.超高齢化社会の医療を担うわれわれに求められることは,健康寿命を延ばす,つまりはADL/IADLやQOLを上げられる費用対効果のいい医療をエビデンスを含めつくり,世界に輸出することにあると妄想しています.栄養療法に興味をもち,臨床・研究にかかわる人が増えることを望みます.

若林秀隆 Hidetaka Wakabayashi
横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科
専門:リハビリテーション栄養,サルコペニア,摂食嚥下障害
2016年に岡田唯男 先生,北西史直 先生に編集協力をいただき,「その患者さん、リハ必要ですよ!! 病棟で、外来で、今すぐ役立つ!評価・オーダー・運動療法、実践リハビリテーションのコツ」(羊土社)という書籍を出版しました.リハと栄養管理は治療を円滑に進めるための車輪の両軸ですので,リハと栄養管理の両者をしっかり学習してください.

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