レジデントノート:腹部CTの読み方がわかる!〜研修医が今すぐ知りたい、よく遭遇する疾患の“基本的な読影方法”をわかりやすく教えます!
レジデントノート 2019年7月号 Vol.21 No.6

腹部CTの読み方がわかる!

研修医が今すぐ知りたい、よく遭遇する疾患の“基本的な読影方法”をわかりやすく教えます!

  • 藪田 実/編
  • 2019年06月10日発行
  • B5判
  • 146ページ
  • ISBN 978-4-7581-1628-2
  • 定価:2,000円+税
  • 在庫:あり
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特集にあたって

特集にあたって

藪田 実
(聖路加国際病院 放射線科)

基本的な読み方を大切にしよう

私は初期研修医だったとき,的確な画像診断を通して患者さんの診療方針の交通整理役を務め,院内で非常に尊敬されていた放射線科医の先生に強く憧れ,放射線科医になりました.尊敬する先生に教えていただいた重要なポイントは,① 解剖を勉強すること,② commonな疾患や所見をしっかり勉強すること,③ 患者さんの転帰,手術所見や病理所見などをチェックして,画像診断にフィードバックすることなどでした.同じ疾患でも患者さんによって所見は大きく異なります.しかし,解剖の差異は比較的小さく,commonな所見を論理的に組合わせることで診断に至ることができます.これが「基本的な読み方」であり,フィードバックを積み重ねることで,画像診断力の向上につながると思います.本特集では腹部CTの「基本的な読み方」が身につくような特集を組ませていただきました.

画像検査の依頼情報の記載は放射線科医への紹介状である

画像診断は現在の日常診療において不可欠なものになり,その有用性は増し続けています.私が放射線科医として依頼された画像を読影するときには,依頼医が記載した検査の依頼情報に必ず目を通します.理想的には,毎回診療録を確認できればよいのですが,膨大な読影量をこなさなければならないので,全例で診療録を確認することは非常に難しいのが現状です.そこで,この検査の依頼情報が読影の非常に重要なポイントになります.

ここで非常に大事なことをお伝えします.画像検査の依頼情報の記載は放射線科医への紹介状だと思ってください.例えば,循環器内科をローテーションしている研修医の先生が担当の患者さんを消化器内科に診察依頼するときは現病歴,既往歴,診察を依頼した理由などの詳細を添えて依頼すると思います.決して「腹痛」の二文字だけで依頼することはないはずです.ところが,放射線科医として日々読影の依頼を受けていると「腹痛」,「頭痛」や「めまい」といった記載しかないことがしばしばあります.放射線科医は症状の種類や程度,発症のタイミング,特徴的な身体所見の有無,既往歴(特に悪性腫瘍の既往歴や家族歴など)やほかの検査所見などを参考にしながら,画像所見を拾い出し,これらを統合・整理したうえで,論理的に思考するというクリエイティブなプロセスを通じて診断を下しています.また,依頼医がどのような疾患を疑っていて,どのような疾患を除外したいのかという情報も患者を目の前にしていないわれわれ放射線科医にとっては非常に有益な情報です.ですので,これらがキチンと記載されている画像検査の依頼文を参考にできると画像診断の精度が高くなり,正確な診断・治療への近道になると思います.

近い将来,AIは放射線科医にとって代わるか?

「1999年7月,恐怖の大王が世界を滅亡させる」というノストラダムスの大予言なるものが過去にはありました.当時は大変なブームになり,人々は漠然とした不安に包まれていました.現在,医療界にはノストラダムスの大予言と同じような話が囁かれています.そのうちの1つが「AI(artificial intelligence:人工知能)は放射線科医にとって代わる」というものです.

チェス,将棋や囲碁の世界ではAIが人間を打ち負かすことに成功しています.現時点で最強と言われているソフトは「強化学習」と呼ばれる手法を使い,人間が教えたルールに則ってAI自身が何百万もの対局を独自で行います.その結果として独学で勝利のパターンを身につけることが可能であり,チェスで9時間,将棋で12時間,囲碁では13日間でパターン学習を終了させたそうです.実際の対局では学習で身につけた膨大なデータから勝利につながる手を導き出すようです.画像診断の世界でもAIの波が押し寄せており,画像との相性の良さからさまざまな研究が急速に発展しています.肺結節・骨転移などの病変を自動的に同定するAI,病変の径や体積を自動測定するAI,病変の良悪性を評価するAI,前回画像との比較を自動的に行うAIなどが開発されつつあります.

他方,日本の国立情報学研究所が主体となって進行していたプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」において研究されていたAI「東ロボくん」の存在があります.東ロボくんは東大入試を突破する能力を身につけることを目標に開発されていましたが,その目標を達成する見込みが立たないまま,開発が途中で中止されました(最終的には全受験生の上位20%に入る学力を習得できたそうです).開発中止の理由として,AIは学習によって得られた圧倒的なデータの検索・照合には優れているものの,文章の読解力が乏しく,物事の意味を論理的に理解することが難しい点があげられています.つまり,チェス・将棋・囲碁のような膨大なパターンのなかから最良の一手を探し出すことには優れていても,得られたさまざまな情報を統合・整理し,論理的な思考を通じて結論に至るクリエイティブな作業は得意でないようなのです.

これらをまとめると,「近い将来,AIは放射線科医にとって代わる」というよりも,「AIを使いこなすことで,放射線科医の仕事は楽になる」,「AIを使わない放射線科医が AI を活用する放射線科医によって淘汰される」ということが類推できると思います.AIを駆使することで,それまで煩雑だった手作業が自動的に行われ,放射線科医そしてすべての医師が得られた情報を統合・整理して,論理的に思考するクリエイティブな作業に集中できるようになると思います.「近い将来,AIは放射線科医にとって代わる」というノストラダムスの大予言のような漠然とした不安を感じている先生方も画像診断・放射線科・放射線医学の門戸を心配することなくドンドンと叩いてください.

 おわりに

私自身が研修医のときにこのレジデントノートを読んで勉強したので,今回の特集は非常に思い入れのある1冊に仕上がりました.そして,執筆をお願いした先生方も日常診療の第一線で日々奮闘され,画像診断のエッセンスを熟知しているレジデントノート世代の放射線科医たちです.研修医の先生方,皆さんのお役にたてることを願っております.


【謝辞】
本稿の執筆にあたり多大な助言をいただきました畏友 京都大学医学部附属病院
先制医療・生活習慣病研究センター 西尾瑞穂先生に深謝いたします.

著者プロフィール

藪田 実 Minoru Yabuta
聖路加国際病院 放射線科
神戸市立医療センター西市民病院で初期臨床研修を行い,倉敷中央病院,京都大学病院,洛和会音羽病院で修練しました.好きな言葉は他力本…,いや,「牛に引かれて善光寺参り」です.節目節目で素晴らしい人たちに導いて頂き,今の自分があります.自分が牛になるべく頑張っていますが,体重だけが増えるばかり….

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