レジデントノート:誰も教えてくれなかった病棟回診〜各時間帯でみるべきもの、やるべきこと、情報収集の勘所
レジデントノート 2025年6月号 Vol.27 No.4

誰も教えてくれなかった病棟回診

各時間帯でみるべきもの、やるべきこと、情報収集の勘所

  • 官澤洋平/編
  • 2025年05月09日発行
  • B5判
  • 156ページ
  • ISBN 978-4-7581-2734-9
  • 2,530(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり

特集にあたって

特集にあたって

官澤洋平

病棟回診は非常に重要な業務ですが,「きちんと学んだ経験がない」と感じる研修医の先生が多いようです.病棟回診について知りたい!という声を多く耳にし,レジデントノート編集部から本企画の相談を受けた際,日頃から回診を大切にしている身としては大変嬉しく感じました.

私自身も研修をはじめた頃は,プレラウンド(朝一番に行う1人での回診)で患者さんのもとへ向かう際,「何も問題が起きませんように」「質問されませんように」と祈るような気持ちだったことを思い出します.また,プレゼンテーションでは指導医から「この所見は確認しましたか?」と指摘を受けることもありました.こうした経験を経て,病棟回診は単なるルーチンワークではなく,臨床力・プロフェッショナリズムを鍛える貴重な機会であると実感しました.

今回の企画では,「大切だけれど系統的に教わる機会が少ない」病棟回診について,研修医の先生方が少しでも前向きに取り組めるような内容をめざしました.研修医が朝病院に到着してから夕方退勤するまでの1日の流れをイメージし,それに基づいて項目を分けています.それぞれの時間帯で確認すべき事項をリスト化し,実際の病棟業務で活用しやすい構成を意識しました.

プレラウンドに対する考え方の変化

近年,働き方改革の影響もあり,研修医の働き方が注目されています.10年以上前,私が研修医だった頃は病棟に泊まり込むこともあり,早朝に出勤して採血や回診をする文化が残っていました.しかし最近では,プレラウンドの利点と欠点について議論した論文がNew England Journal of Medicine(NEJM)1)にも掲載されるなど,回診の在り方が再考されています.

この論文では,プレラウンドのメリットとして次の点があげられていました.

  • 研修医の自主性と当事者意識の向上
  • 微細な臨床変化の早期発見
  • データ処理能力や批判的思考の向上
  • 患者-医師関係の構築

一方で,患者さんの睡眠を妨げる可能性や,冗長化による効率低下といった懸念も指摘されています.研修医の先生方にとって,病棟回診は貴重な学習機会ですが,患者さんの視点に立ち,負担を最小限にする配慮も大切です.

環境やプレゼン相手に応じた回診の在り方

また,病棟回診のスタイルは医療機関ごとに異なります.大学病院では多職種がかかわる大規模な回診が行われることが多く,地域の病院ではよりコンパクトで効率的な回診が求められることもあります.研修医として,環境に応じた回診の在り方を考え,自分なりの工夫を加えることも重要です.

さらに,指導医によって回診の進め方や求められるプレゼンテーションのスタイルが異なるため,柔軟に対応できるスキルを身につけることも求められます.例えば,ある指導医は簡潔な報告を重視する一方で,別の指導医は詳細な所見や考察を求めるかもしれません.そうした違いを理解し,チームのメンバーとコミュニケーションをとることも,研修医としての成長につながるのです.

3研修期間中に積極的に回診しよう

研修医の特権の1つとして,患者さんとゆっくり話す時間がとれることがあげられます.指導医や上級医は多忙で,どうしても患者さんと長く話す機会が限られますが,研修医は診療の合間に患者さんの思いや背景にじっくり耳を傾けることができます.この時間は,患者さんとの信頼関係を築くだけでなく,診療の本質を学ぶ絶好の機会となります.患者さんの何気ない一言が診断の手がかりになることもあり,その大切さを実感する瞬間も多いでしょう.研修期間中に,できるだけ多くの患者さんと対話し,医療者としての基盤を築いていってほしいと思います.

本特集では,さまざまな視点を取り入れ,より充実した病棟診療を実現するためのヒントを提供したいと考えています.執筆者の先生方には,研修医や若手医師に教えていること,よく質問される内容を思い出しながら,実践に直結する内容を意識して執筆いただきました.また,エビデンスの有無にかかわらず,これまで指導を受けたなかで印象に残った「パール」も自由に表現していただいています.

それぞれの現場での回診風景や指導風景が浮かぶような特集になったのではないかと思います.回診前に不安を感じたとき,手に取っていただける一冊になれば幸いです.

引用文献

  • Schubach A, et al:To Preround or Not to Preround. N Engl J Med, 390:1824-1826, 2024(PMID:38749040)

著者プロフィール

官澤洋平(Yohei Kanzawa)
神戸大学医学部附属病院 総合内科
2025年4月から大学病院に主軸を移しました.研修医だけでなく学生ともたくさん接する機会ができるので,ベッドサイドに足を運ぶことの大切さを伝えていきたいと思います.神戸でジェネラリストをめざす仲間を募集しています! ぜひ見学に来てください(Xアカウント @Yohei_Kanzawa).

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誰も教えてくれなかった病棟回診

各時間帯でみるべきもの、やるべきこと、情報収集の勘所

  • 官澤洋平/編
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