レジデントノート:皮膚疾患 所見の診かた・鑑別、コンサルト、薬の使い分けがわかる!できる!
レジデントノート 2025年12月号 Vol.27 No.13

皮膚疾患 所見の診かた・鑑別、コンサルト、薬の使い分けがわかる!できる!

  • 多田弥生/編
  • 2025年11月10日発行
  • B5判
  • 154ページ
  • ISBN 978-4-7581-2743-1
  • 2,530(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり

特集にあたって

特集にあたって

多田弥生
(帝京大学医学部皮膚科学教室 主任教授/帝京大学医学部附属病院 皮膚科 科長)

日常診療において,皮膚の異常に遭遇する機会は決して少なくありません.皮膚は全身の健康状態を映し出す“鏡”であり,その変化は診断や治療方針を大きく左右します.皮膚症状を正しく捉えることで,全身疾患の早期発見につながることもありますが,その一方で皮膚の異常は多彩かつ非特異的であり,診断や初期対応には経験と知識が不可欠です.特に研修医の先生方にとっては,「皮膚科に相談すべきか」「自分でどこまで対応できるか」「このまま帰宅させてよいか」といった判断に迷う場面も多いでしょう.さらに,皮膚科にコンサルトする際には,視覚的に認識できる皮疹を的確に言語化する必要がありますが,忙しい診療のなかで皮膚科の教科書を開く時間は限られています.

本特集は,こうした日常診療における皮膚異常への“初動対応”を支援することを目的に企画しました.まず【総論:皮膚疾患の診かた,薬の使いかた】では,皮疹の診かたや表現方法を整理します.発疹,紅斑,水疱,びらん,結節,潰瘍などの基本病変については,観察方法や表現のしかたを解説し,適切にコンサルトできる力を養います.また,アトピー性皮膚炎や湿疹に対する外用薬の選び方・使い分けにも触れています.特集の最後に,ステロイド外用薬の力価一覧と部位別吸収性の早見表を収載し,薬剤選択に迷った際の対応を可能にしています.これらは日常診療の現場で即座に役立つ内容です.

研修医が特に困りやすい症状や場面も洗い出し,【各論:よく遭遇する皮膚疾患への対処】で解説しています.現場で頻繁に遭遇する症状や疾患を厳選し,初期対応に必要な情報をコンパクトにまとめました.痒みを訴える患者へのアプローチでは,皮疹の特徴や病歴からの鑑別の流れを示し,疥癬や白癬など感染症に伴う痒みも紹介しています.実際の治療編では,抗ヒスタミン薬の選択など,症状や背景に応じた薬物療法の考え方を整理しました.ほかにも,救急外来で遭遇しやすい水疱や紫斑などの診断・治療,薬疹や感染症のうち自宅に帰せない症例の見極め,小児の痒みを伴う皮疹,外傷や褥瘡に対する適切な創傷ケアも網羅しました.水疱やびらんについては,帯状疱疹や細菌感染から水疱症までを鑑別の視点から解説し,紫斑については血管炎から血管肉腫までさまざまな疾患を取り上げています.

さらに,小児の皮膚疾患では,アトピー性皮膚炎の急性増悪や発疹性ウイルス感染症など緊急度の高いケースを解説し,薬疹については疑うべき臨床症状や病歴,確定診断に必要な検査を提示しています.細菌感染症では,蜂窩織炎や丹毒などのよくある疾患から,壊死性筋膜炎といった生命にかかわる病態までを網羅し,疑うための臨床的特徴と必要な検査を示しました.

今回ご執筆いただいたのは,日々の診療と教育の最前線で活躍されている先生方です.それぞれの専門分野に深く根ざした知識と豊富な臨床経験をもとに,診断のエッセンスや現場での実践的な工夫を惜しみなく盛り込んでくださいました.診療現場での判断を助けるポイント,見落としやすい落とし穴,そして忙しいなかでも活用しやすい具体的な工夫が随所にちりばめられています.症例写真も入れていただき,視覚的に理解できる構成となっているため,教科書的な知識だけでなく,現場で培われた“生きた知恵”が盛り込まれています.このような内容を一冊に凝縮できたのは,ひとえに執筆陣の熱意とご尽力によるものです.この場を借りて,心より感謝申し上げます.

本特集は,机上の参考書としてだけでなく,病棟や外来,救急現場など診療のそばに置き,短時間で必要な情報を引き出せる“ポケットに入る皮膚科”をめざしました.診療中のふとした疑問や,緊急の初期対応が求められる場面で頼れるパートナーとなり,読者の皮膚診療への自信を高める一助となれば幸いです.本特集が,日常診療における“皮膚を診る力”を磨くきっかけとなり,皮膚科に興味をもつ先生が一人でも増えることを心から願っています.

著者プロフィール

多田弥生(Yayoi Tada)
帝京大学医学部皮膚科学教室 主任教授/帝京大学医学部附属病院 皮膚科 科長
若手医師の臨床能力向上を支援し共に成長を喜ぶこと,皮疹が改善し患者さんの笑顔を見られることが大きな励みです.目で見て診断できる皮膚科の魅力を伝え,皮膚の下の炎症を免疫学的に考察し,病態理解から治療につなげることを追究していきます.

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  • 多田弥生/編
  • 2,530(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり