2017年6月号掲載・2025年6月25日公開

敗血症の診断基準は変わり,SIRSに代わってqSOFAが導入されました1).SIRSは体温,脈拍,呼吸数,白血球数の4項目,qSOFAは呼吸数,意識,血圧で構成されています.SIRSからqSOFAへ変更になった理由は大きく2つあります.1つは特異度の問題です.大げさな話,皆さんがその辺を全速力で走り回ればSIRSを満たしますよね.敗血症の原因として肺炎や尿路感染症,腹腔内感染症が多いわけですが,これらの疾患は決して増えていないにもかかわらず敗血症の報告は増えていた事実があります.なんでもかんでも敗血症と診断していたことに問題があったわけです.もう1つが感度の問題です.敗血症のうち約12%は「SIRS+感染症」を満たさないのです2).これら2つの理由から,重篤な病態である敗血症を見逃さないため,敗血症の定義とともにスクリーニングの指標も変わったのです.

qSOFAの優れているところは重篤な敗血症を見逃さないスコアである点にありますが,その項目がなんといっても最強です.3つすべてがバイタルサインであり,そのなかに呼吸数,意識という研修医が見落としがちな項目が含まれていますね.qSOFAから,「呼吸数を意識せよ!」,「軽度の意識障害も軽視するな!」という熱い気持ちを感じとり,敗血症を見逃さないようにしましょう!呼吸数や意識状態を普段から意識している人にとってはSIRSでもqSOFAでもよいのです.とにかく,意識を含むバイタルサインを常に大切にしましょう.私は患者を診たら,「声をかけ,脈を触れ,呼吸を真似よ!」と研修医に指導しています3).当たり前のことを当たり前にやれば敗血症を見逃すことはないでしょう.

引用文献

1) Singer M, et al:The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock(Sepsis-3). JAMA, 315:801-810, 2016(PMID:26903338)

2) Kaukonen KM, et al:Systemic inflammatory response syndrome criteria in defining severe sepsis. N Engl J Med, 372:1629-1638, 2015(PMID:25776936)

3)「救急外来 ただいま診断中! 第2版」(坂本 壮/著),中外医学社,2024


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