2018年2月号掲載・2025年8月20日公開

40歳男性が体重減少を主訴に来院しました.数カ月で5 kg以上体重が減り,職場の同僚に心配され受診となりました.皆さんどのように対応しますか?

体重減少というキーワードからまず頭に浮かぶのは悪性腫瘍でしょう.しかしこの患者さんは40歳と比較的若く,悪性腫瘍の好発年齢ではありませんね.体重減少がプロブレムリストにあがったら,まず確認することは,それが意図した体重減少か否かです.ダイエットをして体重減少したのであればそれは問題ありませんよね.

意図しない体重減少であることを確認したら,その次には何を確認するべきでしょうか? ずばり「食欲の有無」です.食欲がなく,食べる量が減り体重が減っている場合には,悪性腫瘍以外にも膠原病,感染症,うつ病など鑑別は多岐にわたりますが,食欲はあり,食事をしっかり食べることができている状態にもかかわらず体重が減少している場合には考えるべき病態は限られます.その代表が ① 糖尿病,② 甲状腺機能亢進症です.悪性腫瘍の初期の可能性もありますが,本症例のように比較的若い患者さんの場合には,見逃してはいけないものの,まず考えるべき病態ではありません.糖尿病や甲状腺機能亢進症が鑑別にあがっていれば,インスリン欠乏症状(口渇,多飲,多尿)や代謝亢進症状(発汗,頻脈など)を追加で聴取したくなりますよね.

今回の「食欲の有無」のような,鑑別診断が劇的に絞れる症候をhigh yield symptomと呼びます.鑑別診断を絞るためにkeyとなる症候,病態を常に意識しながら病歴を聴取しましょう.


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