2018年2月号掲載・2025年8月6日公開
28歳女性が発熱,関節痛を認めて救急外来を受診しました.38℃台の発熱,頻脈は認めるものの,その他のバイタルサインに異常はありません.顔面を診ると蝶形紅斑様の所見を認めます.皆さんこのような症例に出会ったらどのように考えますか?
誰もが鑑別にあげるのが,蝶形紅斑というキーワードから全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)だと思いますが,本当にSLEでしょうか? SLEは本邦に約6〜7万人と推定され,決して多い病気ではありません.さらに初発のSLE患者が救急外来を受診する頻度は稀でしょう.
それに対して,同じような病歴で救急外来を受診し,見逃されやすい病態があります.それが伝染性紅斑です.伝染性紅斑は子どもがレース状の皮疹で来院するイメージが強いかもしれませんが,成人では関節痛や皮疹などSLE様の症状で来院する場合があることを知っておきましょう1).
伝染性紅斑は流行時期には1週間で1,000件報告される場合もあり,小児では東京都だけでも毎週15〜50人発症している非常に頻度の高い疾患です2).そのため,本症例のような患者さんが来院したら,子どもとの接触歴を確認するとよいでしょう.この症例では,「お子さんはいらっしゃいますか? 何か最近病気に罹ってはいませんか?」と確認すると,「保育園でりんご病が流行っていて,娘が先週罹りました」と返答がありました.これで決まりですね.不用意に抗核抗体や抗dsDNA抗体など提出してはいけません.“common is common!”です.
引用文献
1) Servey JT, et al:Clinical presentations of parvovirus B19 infection. Am Fam Physician, 75:373-376, 2007
2) 東京都感染症情報センター:東京都感染症週報.2017http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/weekly/