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自己免疫性膵炎は膵腫大・膵管のびまん性狭細化・自己抗体の存在・ステロイドの有効性を特徴とする慢性膵炎の亜型である.IgGサブクラスであるIgG4値の上昇,病変部へのIgG4陽性形質細胞の著明な浸潤が本症に特徴的であり,病因への関与が示唆されている. IgG4値は自己免疫性膵炎患者の90%で上昇する.本症との鑑別が臨床的に問題となる膵癌との鑑別において,そのカットオフ値は135 mg/dL以上で陽性とされている.
本症と膵癌との鑑別には画像所見も重要であり,以下に本症に特徴的な画像所見を述べる.
膵は腫大して,辺縁の分葉状構造が消失し,直線化する(sausage-like appearance,図2→). 腫大はびまん性のみでなく,限局性であることも多い. 造影CTでは早期相で造影効果に乏しく,後期相で造影されるdelayed enhancement(遅延相)が特徴的である(図2,3). また, 病変を縁取るような低吸収の被膜様構造(capsule-like rim)を認めることがあり本症に特徴的とされている(図3→). MRIでは,病変は肝実質と比べてT1強調像で低信号,T2強調像で等~軽度高信号を示す.dynamic MRIではCTと同様にdelayed enhancementを示す.
本症の特徴の1つとされており,ERCP(endoscopic retrograde cholangio-pancreatography,内視鏡的逆行性胆管膵管造影)やMRCP(magnetic resonance cholangio-pancreatography,磁気共鳴胆管膵管像)で評価される.病変より上流の主膵管拡張が軽度で閉塞性膵炎をきたさないことが多い.
治療法はステロイド療法が標準である.しかし,ステロイドなしで自然寛解することも報告されている.
自己免疫性膵炎では後腹膜線維腫症や硬化性胆管炎,硬化性唾液腺炎,肺線維症などをはじめとする多彩な膵外病変が存在し,いずれも病理学的にIgG4陽性形質細胞の浸潤を認め,ステロイド治療が奏功することより,膵病変と同様の病態と想定され,IgG4関連疾患の概念が提唱されている.自己免疫性膵炎はIgG4関連疾患の膵病変と位置づけられる. これらの疾患に遭遇した際には,他のIgG4関連疾患の存在を念頭に置き積極的に全身を検索すべきである.
自己免疫性膵炎は慢性膵炎の亜型であり,救急疾患の範疇に含まれないが,最近注目されているIgG4関連疾患の概念をぜひ紹介したいと考えここに取り上げた.
本症は内科的に治療可能な疾患であるため,膵癌との鑑別が重要である.典型例は容易に診断可能であるが,限局性病変の場合は画像上膵癌との鑑別が困難である場合も少なくない.画像所見に加えて,IgG4値などを考慮し総合的に診断すべきである.
〔 2010年度当院放射線科研修医 蓑輪行輝 先生作成によるティーチングファイルを改変しました〕