画像診断Q&A

レジデントノート 2011年10月号掲載
【解答・解説】喀痰,咳嗽,息切れを主訴とした30歳代男性

Answer

右側の部分的な無気肺を合併したびまん性汎細気管支炎の1例

  • A1:胸部X線写真(図1)では,下肺野優位のびまん性の粒状陰影(①→),やはり下肺野中心のトラムライン(拡張した気管支像,②→)が認められる.右側の肺門縦隔は厚く(③→),また縦隔が右側に偏移している(④→)ことから,右側の部分的な無気肺などの機序が考えられる.すでに前医で治療が行われているのに改善しておらず,治療に難渋するタイプのびまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis:DPB)と考えられる.
  • A2:医療面接では,副鼻腔炎の既往を確かめることが重要である.DPBにおいては,副鼻腔炎はほぼ全例で合併ないし既往がある.また,先天性線毛機能不全症(primary ciliary dyskinesia)の合併を疑って,子供の有無を聞く.線毛機能が低下している場合には,鞭毛の機能が落ちて精子が不活発となり,不妊症になることがある.本例ではその問題はなかった.DPBの多くで寒冷凝集反応や,IgG,IgAが増加することが知られており,これらを測定する.また,HTLV-1ウイルスの感染症でDPBのような症状を呈する場合があることから,HTLV-1の測定を行っておいてもよい.
  • A3:少量長期マクロライド療法が標準治療であるが,無効の場合には適宜ニューキノロン薬などを追加する.
図1 当科初診時胸部X線写真

解説

図1では,とくに左下肺野に粒状陰影の集簇とトラムラインがあり,これまでの経過などからDPBと考えられる.DPBは一般に少量の14員環マクロライド長期投与が有効であることが知られているが,前医ですでにマクロライドは複数種類投与されており改善がみられていない.最近DPB症例は減少しているが,この例のような難治例はまだみられる. 胸部CT像(図234)でも,小葉中心性の粒状陰影(⑤→)や細気管支末端の分岐状陰影(⑥→)や,壁の厚い拡張した気管支所見(⑦→)がみられている.また,右上葉(⑧→)と右下葉(⑨→)が気管支の収束のために部分的な無気肺を形成しており,右胸腔の容積減少,縦隔の右側への偏移はそのためであることがわかる.

肺機能検査では,%肺活量67.7%,1秒率56.6%と,混合性換気障害が認められた.一般に初期のDPBでは閉塞性換気障害を呈する.

本症例はマクロライド以外にもさまざまな対症療法を行っているが症状の改善はあまりみられていない.

図2 下肺野胸部CT像 図3 上肺野胸部CT像 図4 胸部CT像

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プロフィール

山口 哲生(Tetsuo Yamaguchi)
JR東京総合病院呼吸器内科

羊土社発行著作

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