画像診断Q&A

レジデントノート 2012年1月号掲載
【解答・解説】発熱,背部痛を主訴とした10代後半女性

Answer

高安動脈炎

  • A1:胸部下行大動脈の輪郭の軽度凹凸を認める(図1).些細な所見だが,年齢を考慮すると不自然で異常所見とみなすべきである.
  • A2:左総頸動脈,胸部下行大動脈に壁肥厚を認める(図2A,B).肥厚した動脈壁には造影効果を認める.
  • A3:胸部下行大動脈や大動脈弓部分枝に造影効果のある壁肥厚を認め,大血管を主体に侵す血管炎と考える.若年女性の不明熱という背景を加味すると高安動脈炎が最も疑わしい.

解説

図1 胸部単純写真

クリックして拡大

高安動脈炎は,大動脈炎症候群,脈なし病とも呼ばれ,大動脈とその主要分枝,肺動脈などに狭窄,閉塞,拡張をきたしさまざまな症状を呈する原因不明の動脈炎である.若年から中高年の女性に多い.大動脈弓部から胸部下行大動脈,腹部大動脈,弓部分枝などを高頻度におかす.弓部分枝は起始部から数cmの間で壁は肥厚し著明な狭窄,さらに閉塞をきたす.下行大動脈から腹部大動脈の病変では内腔の狭窄をきたし,しばしば異型大動脈縮窄症と称される病態となる.肺動脈の病変も高頻度に認められ,慢性肺動脈閉塞で発見されることもあり,大動脈炎症候群よりは高安動脈炎の呼称がふさわしいという意見の根拠となっており,本稿においてもそれに従った.

臨床症状は疾患の時期および主病変の位置・程度によって異なり,炎症による症状と血管病変による症状にわけられる.本症の診断は臨床症状と動脈の形態的な変化を画像診断にて確認することによりなされる.「脈なし病」との別名もあるが,急性期においては脈なし症状は少なく,不明熱などの非特異的な炎症症状で経過することが多いことから診断が困難な場合も少なくない.

本症例のように,急性期の造影CTで大動脈壁の肥厚や造影効果を指摘できれば,診断の端緒となりうる.その意味で画像診断,特にCTの役割は大きい. さらに,最近では,大動脈炎の早期診断においてFDG-PETの有用性が報告されている. FDG-PETの読影に際して,悪性腫瘍のみならず,このような炎症性疾患においても高集積を示しうる点に留意すべきである. 本症例でも,FDG-PET/CTにて胸部下行大動脈壁肥厚に一致した高集積が認められた(図3).

図2 胸部造影CT/A)弓部分枝レベル,B)胸部下行大動脈レベル. 図3 FDG-PET/CT

クリックして拡大

<症例のポイント>

高安動脈炎は晩期には動脈の閉塞症状をきたし,これは不可逆性である.早期診断が重要だが,急性期は不明熱や腰痛などの非特異的な症状で経過し,診断が困難で,治療が遅れる場合が少なくない.早期診断において,画像診断の果たす役割は大きいが,ここに呈示したように単純写真での下行大動脈の輪郭の凹凸や胸部CTでの大動脈壁肥厚など軽微な所見を呈するのみである.高安大動脈炎と疑ってかかることが重要である. はるか昔,筆者の恩師である林 邦昭 長崎大学放射線科教授(現 名誉教授)が若年女性の不明熱患者で,胸部単純写真の読影に際して下行大動脈の辺縁の凹凸を読みとり,高安動脈炎と確信し,主治医に造影CTをとるようにと指示していたのを記憶している.林教授も初見で異常を指摘しえたかどうかわからない.おそらく,同様な症例を過去に経験していたと推察される.些細な所見だが,一度見ていたら次はわかると考え今回呈示した.最後に,大動脈炎の早期診断におけるFDG-PETの有用性についても今一度留意されたい.

〔 2008年度放射線科レジデント北村 慶先生作成によるティーチングファイルを改変しました〕

プロフィール

松岡 陽治郎(Yohjiro Matsuoka)
国立病院機構長崎医療センター放射線科
サイドメニュー開く

TOP