画像診断Q&A

レジデントノート 2012年2月号掲載
【解答・解説】CTが診断に有用とされる急性腹症の代表的疾患です

Answer

上行結腸癌を先進部とした大腸-大腸型腸重積

  • A1:上腹部腫瘤(図1)は内部に層状の脂肪織(図1)があり,全体として腎臓のようにみえ(pseudokidney sign),腸重積と診断可能である.層状の脂肪織は陥入した腸間膜を示す.
  • A2:腸重積において,小児では大多数が特発性であるのに対し,成人では腫瘍の存在が原因の60%以上とされ,腸重積の原因究明が必要である.本症例でも重積腸管の垂直断再構成像にて先進部となった腫瘍が同定される(図3).

解説

図1 来院時腹部単純CT

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腸重積は腸管の近位側部分(陥入部)が望遠鏡のように近接する遠位側の腸管部分(陥入鞘)に入り込む病態である(図4).多くは小児(3カ月~3歳が好発年齢)に発症し,成人では少ない.しかし,小児の腸重積の90%が突発性であるのに対し,成人例では90%以上に明らかな原因があり,なかでも腫瘍関連の腸重積の発症率は60%以上とされ,結腸型では腺癌が,小腸型では転移性腫瘍が多い.

<臨床症状>小児では嘔吐・腹痛・粘血便,腫瘤触知などが指摘されるが,成人例では特異的症状に乏しく粘血便を欠くことが多い.

<画像診断>超音波が有用で,特に小児では被曝がない点で第一選択である.腸管横断走査にて重積腸管の同心円状所見(target sign)を認める.CTでは腸重積のほとんどが診断可能であり,超音波での疑診例や非典型的症例,合併症を伴う重症例などが対象となる.陥入腸管,その腸間膜組織(脂肪層),陥入鞘が長軸に平行断面であれば層状に(pseudokidney sign:図1図4C),垂直断面であれば同心円状に描出される(target sign:図2図3図4 B).これらの所見は腸重積に特徴的で,特に脂肪層を認めることが診断確定に重要である(図1図2).

ただし,静脈の絞扼があれば浮腫が進行し,腸間膜脂肪が不明瞭になり診断困難な場合もある.先進部(腫瘍)の存在の有無,腸管虚血の状態を評価するうえでもCTは有用である.その際には,より詳細な情報を得るために,重積腸管に対する平行断面や垂直断面の再構成画像を作成するとよい.

<治療>小児の腸重積では80 ~90%が非観血的整復により改善する.成人の腸重積症例は,多くが腫瘍をはじめとする原因疾患があるので画像診断により腫瘍が指摘されなくとも,開腹手術が原則である.この場合,以前は緊急手術が一般的であったが,腸管虚血の所見(腹膜炎所見,腸管内大量出血,敗血症所見)がなく,保存的に経過観察が可能であれば,待機的に手術を行うことにより手術のリスクが軽減されるとの報告があり,今後の標準的治療アプローチとなる可能性がある.

本症例は上行結腸の腺癌が核となり大腸?大腸型腸重積を形成していたのが手術により確認された.

図2 腹部造影CT 垂直断再構成画像;腸重積のレベル 図3 腹部造影CT 垂直断再構成画像;先進部のレベル 図4 腸重積の模式図

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<症例のポイント>

腸重積はCTによりほとんどが診断可能であり,特に,重積内の脂肪層(腸間膜組織)を認めることが診断確定に重要である.図4の模式図により画像の成り立ちを理解していただきたい.成人で問題となる先進部腫瘍の有無や緊急手術の決定に際して重要な腸管虚血の状態を把握することもCT読影に際しての留意点である.

なお,急性腹症は救急外来での頻度は高く,的確な診断と早急な処置が必須である.その予後や治療方針の決定において画像診断の果たす役割は大きい.特に今日主流であるCT診断について各自ある程度は習熟しておく必要がある.参考までに,独習に際してお勧めの著書とサイトを以下にあげておく.① 参考文献にあげた,「ここまでわかる急性腹症のCT」1):記述が簡潔明瞭でわかりやすい. ②「急性腹症のCT」(堀川義文ほか へるす出版):症例が豊富である.③ ②の著者である堀川氏によるインターネット症例集「急性腹症のCT演習問題」(http://www.qqct.jp/).

〔 2007年度当院放射線科研修医 井上 諭 作成によるティーチングファイルを改変しました〕

参考文献

  1. 「ここまでわかる急性腹症のCT第2版」(荒木 力/ 著),p.153,メディカル・サイエンス・インターナショナル,2009

プロフィール

松岡 陽治郎(Yohjiro Matsuoka)
国立病院機構長崎医療センター放射線科
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