画像診断Q&A

レジデントノート 2012年4月号掲載
【解答・解説】呼吸苦,嗄声を主訴とする40歳代女性

Answer

びまん皮膚硬化型全身性強皮症に伴う肺動脈性肺高血圧症の1例

  • A1:肺動脈の拡張を認める(①→:右側はわかりづらいが右中間気管支幹より太く,拡張があることがわかる).右肋骨横隔膜角(CPA)は鈍である(②→).心胸郭比は58%であり,心拡大を認める(③→).
  • A2:皮膚硬化所見から,強皮症が疑われる.自己抗体検索(特に抗Scl-70抗体,抗セントロメア抗体)と皮膚生検を行う.また,間質性肺炎の検索に胸部CTも必要である.肺動脈拡張が認められ,心機能評価のために心臓超音波検査と,血栓症検索目的に造影CT検査を要する.右心カテーテル検査も追加したところ,本症例は,びまん皮膚硬化型全身性強皮症に伴う肺動脈性肺高血圧症(PAH:pulmonary arterial hypertension)であった.
  • A3:PAHに対し,エンドセリン拮抗薬,ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬,プロスタサイクリン製剤,プロスタグランジン製剤などを使用し治療する.本症例では,エンドセリン拮抗薬とPDE5阻害薬を導入した.

解説

図1 初診時胸部X線写真
図2 胸部単純CT像

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左肺動脈が肋骨径に比し,拡大していることから肺動脈拡張がわかる(①→).右CPAは鈍であり,右胸水貯留を示唆する(②→).また,心胸郭比は拡大し,心拡大を認める(③→).両側下肺野には間質性肺炎を疑わせる網状影や輪状影などは指摘できない.

単純CT像(図2)では,右胸水貯留(④→)と左右の肺動脈拡張(⑤→)を認める.造影CTでは肺動脈内に血栓は認めない(図は省略).また肺野条件では,間質性肺炎は指摘されなかった.

<経過>

心臓超音波検査の推定右室収縮期圧は70 mmHg(正常値30 mmHg未満)であり,造影CT検査から肺血栓塞栓症は否定されたため,PAHを疑い,右心カテーテル検査を施行した.その結果,PAHと診断し,ボセンタン,タダラフィルを導入した.呼吸苦,嗄声は改善し,平均肺動脈圧は45 mmHgから34 mmHgへ低下し,良好な経過である.

膠原病にPAHが合併することは知られている.また,本邦での調査では,混合性結合組織病は7.0%,強皮症は5.0%,全身性エリテマトーデスは1.7%のPAH合併がみられ,膠原病のなかでは強皮症にPAHの合併が多い1).主なPAHの治療薬を示す(表)2)

表 肺動脈性肺高血圧症治療剤一覧
商品名
  • ドルナー®
  • プロサイリン®
  • ケアロード® LA
  • ベラサス® LA
フローラン® トラクリア® ヴォリブリス® レバチオ® アドシルカ®
一般名 ベラプロスト エポプロステノール ボセンタン アンブリセンタン シルデナフィル タダラフィル
薬効
分類名
経口プロスタサイクリン(PGI2)誘導体製剤 経口プロスタサイクリン(PGI 2)誘導体徐放性製剤
  • プロスタグランジン
  • I2 製剤
エンドセリン受容体拮抗薬 エンドセリン受容体拮抗薬 ホスホジエステラーゼ5 阻害薬 ホスホジエステラーゼ5 阻害薬
文献2より作成.

これらの治療薬が開発される以前のデータ3)では,間質性肺炎非合併のPAH合併強皮症患者は6年以内に全員(n=17)が死亡している.新規治療薬が開発されてその有効例には稀に遭遇するが,一般に予後はきわめて悪い疾患であると思われる.強皮症を診断した際には,PAHの合併に注意する必要がある.

参考文献

  1. 厚生省特定疾患皮膚・結合組織疾患調査研究班:稀少難治性皮膚疾患分科会研究報告書 平成10年度
  2. 宮地克維,松原広己:PGI2持続静注法.「特集 肺動脈性肺高血圧症 -基礎研究と臨床の進歩-」,日本臨牀,66:2139-2144,2008
  3. Koh, E. T., et al.:Pulmonary hypertension in systemic sclerosis:An analysis of 17 patients. Br J Rheumatol, 35:989-993, 1996

プロフィール

平澤 康孝(Yasutaka Hirasawa)
JR 東京総合病院呼吸器内科
山口 哲生(Tetsuo Yamaguchi)
JR 東京総合病院呼吸器内科
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