画像診断Q&A

レジデントノート 2012年7月号掲載
【解答・解説】肺がん患者の骨シンチグラフィー多発性高集積.骨転移でよいでしょうか?

Answer

肺性肥厚性骨関節症

  • A:骨シンチグラフィーでは,四肢骨,特に頸骨や橈骨の骨幹部から骨幹端部に,左右対称な高集積を認める(図2).骨転移の後発部位である肋骨,頭蓋骨,胸椎,骨盤骨などに異常高集積は明らかではない.下腿単純X線写真拡大像では脛骨骨幹部に薄い層状の骨膜反応を認める(図3).骨シンチグラフィーでの特徴的な病変分布と骨膜反応の形態から肺性肥厚性骨関節症と診断可能である.

解説

肥厚性骨関節症は棍棒状指端肥大症とも呼ばれ,骨膜下の新規骨形成,ばち指,滑膜炎を三徴とする病態である.骨膜炎,滑膜炎に起因する四肢の関節腫張,疼痛が主症状である.さまざまな肺疾患,縦隔疾患に続発するが,成人では肺癌が原因となることが最も多く,骨シンチグラフィーで高集積をきたすことから,骨転移の鑑別疾患として重要である. 機序は神経因性であると考えられている.肺の原発巣切除によって骨関節症状は改善する.さらに,化学放射線療法によっても改善することがあり,再発は症状の再燃をきたすとされている.

骨転移との鑑別において画像所見は重要である.骨膜下の変化は長管骨の骨幹部に生じ,通常骨端は冒さない.単純X線写真ではさまざまなタイプの骨膜反応がみられるが,典型的には,本症例のような単層性のもの(図3)と,軽快・増悪のくり返しによる多層性のものとがある.骨シンチグラフィーでは前腕や下腿などの四肢骨優位の対称性高集積を示す(図2).皮質を中心に集積するため,double stripeと呼ばれる特徴的な平行2直線の像を呈することがある.骨シンチグラフィーの異常は,単純X線写真の変化が生じる以前に認められる.通常骨転移でみられるような脊椎,骨盤骨,頭蓋骨などの躯幹骨には異常集積はみられない.

図2 骨シンチグラフィー 図3 右下腿単純X 線写真:拡大像

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<症例のポイント>

肥厚性骨関節症は肺癌に続発することが多く,骨シンチグラフィーで高集積をきたすことから,骨転移の鑑別疾患として重要である.骨転移は造血髄に多く,具体的には脊椎,骨盤骨,頭蓋骨,胸郭などの躯幹骨に多い.また,髄質から冒されることが多いことも鑑別点となる.一方の肥厚性骨関節症では,好発部位は四肢骨であり,左右対称であることが多く,病変は骨膜・骨皮質から生じる.これを反映して単純X線写真で層状の骨膜反応を呈することも鑑別点の1つである. 骨シンチグラフィーでは悪性腫瘍の骨転移が容易にスクリーニングできるが,肥厚性骨関節症のような転移との鑑別を必要とする特殊な病態があることを知り,必要に応じて単純X線写真の追加などによる部位を絞った詳細な評価が必要である.

〔 2008年度当院放射線科研修医 田村真吾先生作成ティーチングファイルを改変しました〕

プロフィール

松岡 陽治郎(Yohjiro Matsuoka)
国立病院機構長崎医療センター 放射線科
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