画像診断Q&A

レジデントノート 2012年7月号掲載
【解答・解説】健診発見,無症状,胸部異常陰影で受診した30歳代男性

Answer

肺クリプトコッカス症

  • A1:胸部単純X線写真では,右上肺野に比較的辺縁明瞭な斑状影を認める (図1).胸部CTでは,右上葉に辺縁明瞭な結節影を認める.胸膜嵌入像や辺縁のけばたち (spicula) は認めない (図2).
  • A2:結節影を呈する疾患として,肺腫瘍,結核腫,Wegener肉芽腫症,肺クリプトコッカス症などを鑑別として考え,腫瘍マーカー,ANCA(抗好中球細胞質抗体),クオンティフェロン®-3G,クリプトコッカス抗原を測定,気管支鏡検査を考慮する.

解説

本症例は,肺クリプトコッカス症の症例である.

結節影を呈する疾患の鑑別であるが,原発性や転移性も含めた肺腫瘍,感染症として結核腫や肺クリプトコッカス症,Wegener肉芽腫症などを考える.腫瘍マーカー,ANCA,クオンティフェロン-3Gは陰性であり,クリプトコッカス抗原が32倍と陽性であった.気管支鏡検査,経気管支肺生検を施行,グロコット染色で菌体を認め,培養でもクリプトコッカスが検出され診断確定した.

クリプトコッカスは,土壌やハトの糞などに生息する酵母型真菌で,ヒトには経気道的に感染する.本症を疑う場合,ハト等の鳥類との接触歴や居住環境等の病歴聴取は重要とされるが,接触歴がない場合も多い.健常者であれば不顕性感染に終わることが多いが,免疫不全患者では容易に発症する.主要な防御機構は細胞性免疫であり,AIDSを代表とする細胞性免疫不全患者で好発する.ただし,他の真菌症と異なり健常者にもしばしば発症する.健常者に発症する原発性と,基礎疾患のある患者に発症する続発性に分けられる.

原発性の場合は,半数以上は無症状で健診などで偶然発見されることが多い.肺腫瘍との鑑別は重要であり,実際に胸腔鏡下や開胸手術で診断される場合も少なくない.CTでは,胸膜直下の比較的辺縁明瞭な単発あるいは多発する結節が多くみられ,浸潤影を呈する場合もある.空洞は40%程度にみられるとされる.同一肺葉内の多発結節が特徴の1つであり,多肺葉に広がる場合も同一肺葉内に多発する傾向にある. 髄膜炎の合併もときにみられるので注意を要する.

続発性の場合は,発熱や呼吸器症状,全身症状を認め,髄膜炎など肺外病変を有する場合が多い.CTでは単発あるいは多発結節に加え,肺炎様の浸潤影や,すりガラス陰影,粟粒陰影,胸水貯留など多彩な陰影を呈する.

血清中のクリプトコッカス抗原は,感度(80~100%)および特異度(約90%)とも高く有用である.なお真菌症であるが,β-Dグルカンは通常陰性である.

本症例では,髄膜刺激症状はなかったが髄液検査も施行,異常所見はみられなかった.フルコナゾール経口投与を開始し,2カ月後には結節は減少し陰影は大幅な改善を認めた.

図1 胸部単純X 線写真(初診時) 図2 胸部CT(肺野条件) 図3 胸部単純X 線写真(改善後)

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プロフィール

笠井 昭吾(Shogo Kasai)
社会保険中央総合病院内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
社会保険中央総合病院内科
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