画像診断Q&A

レジデントノート 2012年9月号掲載
【解答・解説】健診で胸部単純X線異常が発見された20歳代男性

ある1年目の研修医の診断

両側の肺門部に腫瘤があります.鑑別疾患は,サルコイドーシス,肺癌…です.

Answer

肺サルコイドーシス

  • A1:両側肺門部リンパ節腫脹,縦隔リンパ節腫脹,右上肺野に散在する結節影
  • A2:サルコイドーシス,肺門リンパ節結核,悪性リンパ腫

解説

胸部単純X線写真では両側の肺門部リンパ節は馬鈴薯状 (potato like) を呈し,両側肺門部リンパ節腫脹 (BHL:bilateral hilar lymphadenopathy) を認める (図1).また,右気管傍線の拡大があり縦隔リンパ節腫脹 (図1) も伴っている.また,右上肺野にも散在性に小粒状影,結節影 (図1) がみられる.

肺門縦隔リンパ節腫脹をきたす疾患の鑑別として,サルコイドーシス,肺門リンパ節結核悪性リンパ腫などがあげられる.第一に,BHLはサルコイドーシスの呼吸器系病変として有名な所見である.サルコイドーシスの発見時の1/3は無症状であるが,霧視・羞明・飛紋・視力低下などの眼症状で発見される場合が最も多く,ついで皮疹,咳,全身倦怠が多い.第二に,肺門リンパ節結核の肺門リンパ節腫脹は片側性が多いが,稀には両側性もある1).肺門リンパ節結核では発熱,全身倦怠感などの症状を認めることが多い.第三に,悪性リンパ腫はリンパ節の存在する肺門縦隔に病変を形成することがある.悪性リンパ腫では全身倦怠感,発熱,盗汗などの症状を表すことがある.もちろん,BHLを起こす悪性腫瘍のリンパ節転移は多くはないがありうる.研修医のあげた肺癌は画像の鑑別診断として間違いではないが,若年かつ無症状であることから考えにくい.

本例は生来健康な若年成人で,かつ,画像所見と比べて症状がほとんどないことから,サルコイドーシスを最も疑い,胸部CTを実施した (図23).胸部CTでは,より詳細なリンパ節腫脹の状態や肺野病変の検出が可能である.サルコイドーシスの肺野陰影では小粒状影図3B)や気管支血管周囲間質の肥厚像図3B) がみられる.粒状影はリンパ路に沿って分布することを反映し,小葉中心部にも小葉辺縁部 〔胸膜(図3B),小葉間隔壁(図3B) ,気管支肺動脈に接して〕 にもみられる2).また,粒状影が集簇して結節を形成するとsarcoid galaxy sign図3A3)と呼ばれサルコイドーシスに特徴的な所見とされている.

本例は胸部CT所見もサルコイドーシスとして矛盾がなく,診断目的に気管支鏡検査を実施した.経気管支肺生検にて非乾酪性肉芽腫が得られ,気管支肺胞洗浄液ではリンパ球増多がみられ,そのCD4/CD8比は高値であり,サルコイドーシスと診断した.本例は眼サルコイドーシスおよび心サルコイドーシスの合併は認めなかった.若年発症のサルコイドーシスの70%は発症2年以内に自然寛解するが,残りの症例は長期間病変が残存し,5~10%の症例は進行性の難治症例となる.

図1 来院時胸部単純X 線正面像 図2 胸部CT 縦隔条件 図3 胸部CT 肺野条件

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文 献

  1. 杉崎勝教 ほか:両側肺門リンパ節腫脹を呈した成人肺結核の1例―肺結核137例の胸部X線写真所見との比較検討―.サルコイドーシス/肉芽腫性疾患,27:81-84,2007
  2. 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
  3. Nakatsu, M., et al.:Large coalescent parenchymal nodules in pulmonary sarcoidosis:“sarcoid galaxy” sign. Am J Roentgenol, 178:1389-1393, 2002

プロフィール

大河内 康実(Yasumi Okochi)
社会保険中央総合病院 内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
社会保険中央総合病院 内科
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