画像診断Q&A

レジデントノート 2013年2月号掲載
【解答・解説】腸回転異常症の合併症の1つです

Answer

中腸軸捻転 + 腸間膜リンパ嚢腫(基礎に腸回転異常症あり)

上腸間膜静脈は上腸間膜動脈の左腹側に位置しており(図A),腸回転異常を示唆する所見である.さらに尾側では上腸間膜動脈を中心に上腸間膜静脈が時計方向に渦を巻いて走行している(図BC:whirlpool sign).以上から,腸回転異常に伴う中腸軸捻転を疑う.膀胱 (図D) の腹側の単房性嚢胞腫瘤 (図D)の内容は膀胱(尿)より低濃度でリンパ液が疑われる.腸間膜捻転により引き起こされるリンパ流の慢性うっ滞が原因のリンパ嚢腫と診断可能である.

解説

腸回転異常症は,中腸軸捻転とLadd靱帯による圧迫の2つの機転により,主に十二指腸レベルでの閉塞をきたし,新生児期に胆汁性嘔吐で発症する.ここでは,「腸回転異常」と「中腸軸捻転」の概念の理解が重要である.腸管は,胎生期に上腸間膜動脈を中心に十二指腸係蹄と盲腸係蹄がそれぞれ270°の回転をしながら腹腔内に還納されるが,その過程で腸回転の異常が生じたものを腸回転異常と総称する.回転が90°未満のものがnon-rotationで,回転が90~180°のものが,incomplete rotationで,前者より高頻度である.このタイプでは盲腸は上腹部中央に位置し,十二指腸係蹄およびTreitz靱帯が形成されないので中腸軸捻転を起こしやすい.「腸回転異常」は発生段階での異常であり,「軸捻転」は腸回転異常に合併しやすい後天的な結果と言える.

画像診断では上部消化管造影が必須である.まず十二指腸係蹄の形状を観察する.腸回転異常の場合には,係蹄が形成されずに十二指腸下降脚から上行せずにそのまま下行し空腸に移行する.軸捻転があればその部分が螺旋状に走行し狭窄している像を呈する(cork screw sign). 超音波検査は被曝の心配がなく,最初に施行されることが多く,診断の糸口となる.腹部CT所見は超音波検査所見と同様で, 腸回転異常では,上腸間膜動静脈の左右の位置の逆転(動脈が右,静脈が左:図A)や,中腸軸捻転を合併した症例では,上腸間膜動脈を軸に上腸間膜静脈が渦巻き状の走行を呈する所見(whirlpool sign:図BC)などの診断的価値が高い

腸間膜リンパ嚢腫 (図D) は中腸軸捻転にときに合併し,軸捻転によるリンパ流の慢性うっ滞が成因とされている.嘔吐の患児で,超音波検査等で腸間膜に嚢腫が認められた場合は中腸軸捻転を想起すべきであろう.

図A 腹部造影CT A からD の順で,頭側から尾側に.
図B 腹部造影CT A からD の順で,頭側から尾側に.
図C 腹部造影CT A からD の順で,頭側から尾側に.
図D 腹部造影CT A からD の順で,頭側から尾側に.

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<症例のポイント>

腸回転異常症は中腸軸捻転やLadd靱帯による圧迫の2つの機転により,上部消化管閉塞症状をきたし,多くは新生児期に発症する.しかし,中腸軸捻転合併例でも,乳幼児期以降の発症例では一般に症状が軽く反復性であることが多いので注意する.画像所見では,超音波検査で上腸間膜動静脈の左右の位置の逆転や,中腸軸捻転合併例における上腸間膜静脈が渦巻き状の走行を呈する像(whirlpool sign)が特徴的である.診断確定には上部消化管造影が必須で,腸回転異常症では十二指腸係蹄が形成されずにそのまま下行し空腸に移行する所見が認められる

〔2008年度当院放射線科研修医 茗荷良則先生作成 ティーチングファイルを改変しました〕

プロフィール

松岡 陽治郎(Yohjiro Matsuoka)
国立病院機構長崎医療センター放射線科
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