画像診断Q&A

レジデントノート 2013年3月号掲載
【解答・解説】食欲不振,乾性咳嗽,呼吸困難で受診した70歳代女性

Answer

癌性リンパ管症

  • A1:両肺に広範なすりガラス陰影をみる.血管影が不鮮明で,両側下肺野外側に胸膜から垂直に線状影 (KerleyのB線) を認める (図1).右肺門部のリンパ節腫大が疑われる (図1).
  • A2:癌性リンパ管症やリンパ増殖性疾患を疑い,乳房や腹部の触診,上部消化管検査を行う.

解説

本症例は,癌性リンパ管症の一例である.

乾性咳嗽,呼吸困難などの症状,画像上両肺にびまん性に広がる粒状影や線状影 (KerleyのB線) を認めることから,リンパ路に沿って展開するびまん性肺疾患,具体的には癌性リンパ管症やリンパ増殖性疾患を疑う.頻度から言えば前者が多い.

癌性リンパ管症は,頑固な乾性咳嗽や呼吸困難で発症する.すでに癌と診断されている症例の経過中に出現する場合が多いが,本症例のように癌性リンパ管症による呼吸器症状をきっかけに原発巣の発見に至る例もときに経験する.胸部単純X線写真では,びまん性の粒状影や線状影 (KerleyのB線),血管影の不鮮明化などが特徴的で,胸水貯留や肺門リンパ節腫大が認められることもある.本症例の胸部CTでは,小葉間隔壁の肥厚 (図2) が目立ち,気管支血管束の肥厚 (図3) や,すりガラス陰影を認める.これは肺の既存のリンパ管の分布 (=広義の間質) に沿って病変が広がっていることを意味する.

癌性リンパ管症の原発巣としては,肺癌,胃癌,乳癌が多い.大腸癌や甲状腺癌では結節状の転移が多く,膵臓癌では結節影に加え,肺炎様の広がりを呈する場合がある.癌性リンパ管症の発症機序は,肺門リンパ節転移から逆行性に肺内のリンパ管へ広がるとする説,癌が肺に血行性に転移し,リンパ管に侵入しリンパ路に沿って広がるとする説がある.最近は後者の見解が多い.

本症例では肺に原発を疑う陰影は認めず,乳房には腫瘤を触知しなかった.心窩部に腫瘤は触知しないが軽い圧痛があった.上部消化管内視鏡にて4型の進行胃癌が発見された.また肺病変に関しても経気管支肺生検にて低分化腺癌がリンパ管に浸潤している所見がみられ,胃癌による癌性リンパ管症と診断した.抗癌剤による治療を開始したが,残念ながら数カ月後に亡くなられた.一般的に癌性リンパ管症の予後はきわめて悪く,呼吸器症状出現から死亡までの平均期間は2カ月前後とされている.

なお,血液検査でCA19-9が高値であるが,CA19-9は気管支拡張症などの慢性気道感染症でも高値を示し,ときに数千まで上昇する場合もある.基礎に呼吸器疾患を有する例におけるCA19-9上昇は,腫瘍マーカーとしての意義は低いことを知っておくべきである.

図1 来院時胸部単純X線写真
図2 来院時胸部CT(肺野条件)
図3 来院時胸部CT(肺野条件):図2と別のスライス

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プロフィール

笠井 昭吾(Shogo Kasai)
社会保険中央総合病院内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
社会保険中央総合病院内科
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