画像診断Q&A

レジデントノート 2013年6月号掲載
【解答・解説】肝内のガスを認めます.胆道気腫でよいですか?

Answer

門脈内ガス,非閉塞性腸間膜虚血 (non-occlusive mesenteric ischemia:NOMI) による回腸-結腸壊死

  • 図1:腹部造影CTにて肝両葉に樹枝状に分岐する空気濃度 (図1)が認められる.辺縁まで分布し,腹側優位の分布を示す.門脈内のガスと考えられる.肝は区域性に造影効果が低下している (図1)が,門脈内ガスによる門脈血流低下を反映しているものであろう.
  • 図23:骨盤内の小腸から結腸肝彎曲まで造影効果が低下し (図3),壁内に気腫が生じている (図2).腸間膜内にもガスがみられ (図2),上腸間膜静脈内のガスと考えられる.腸管壊死の所見である.上腸間膜動静脈は保たれており (図3),NOMIによる小腸壊死と考えられた.

解説

門脈内ガスの多くは消化管の重篤な障害の結果として生じ,なかでも重要なものは消化管の壊死である.門脈内ガスが生じた患者の致死率は75%に達するともされ,絶対に見落としてはいけない病態である.

近年はCTの普及に伴って小腸閉塞や結腸憩室,胃潰瘍や内視鏡検査後などに生じる“良性の”門脈内ガスの報告も増えてきているが,門脈内ガスをみたときに腸管壊死を念頭においた病変の検索が必要であることは変わりない.

門脈内ガスはCTで肝辺縁に樹枝状に分布する空気濃度として観察される.重力と血流の影響を受けるため,肝左葉の腹側に分布することが多く,門脈血流に乗って肝辺縁2cm以内まで達する.

胆道気腫(pneumobilia)が中枢に分布する(胆汁は求心性に流れるため)のと対照的である(参考:図4).

非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)は血管閉塞によらない血流低下による腸管虚血/壊死をいい,腸管虚血全体の20~30%を占めるとされる.低灌流に引き続いて発生する腸管血管攣縮が原因として考えられている.ジギタリスやバソプレシン,エルゴタミンなどの薬剤が原因となることもある.虚血の程度は,局所にとどまるものから腸管の広範な壊死を生ずるものまでさまざまである.

本症例では壊死腸管に壁内気腫(pneumatosis intestinalis)を生じている.腸管虚血/壊死は実にさまざまな画像所見を呈するため,本稿ではNOMIの概略を呈示するにとどめる.詳しくは他の成書,文献を参照されたい.

図1 腹部造影CT像
図2 腹部造影CT像(図1より尾側)
図3 腹部造影CT partial MIP像
図4 胆道気腫の腹部CT像

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<症例のポイント>

肝内に管状に空気濃度がみられたとき,胆道気腫と早合点せず,門脈内ガスの可能性を考慮することが大切である.

また,急性腹症においては腹腔内遊離ガスや腸管気腫などで「空気」 が診断の重要なポイントになることが少なくないため,腹部CTを肺野条件でも観察することが勧められる.

プロフィール

田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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