門脈内ガスの多くは消化管の重篤な障害の結果として生じ,なかでも重要なものは消化管の壊死である.門脈内ガスが生じた患者の致死率は75%に達するともされ,絶対に見落としてはいけない病態である.
近年はCTの普及に伴って小腸閉塞や結腸憩室,胃潰瘍や内視鏡検査後などに生じる“良性の”門脈内ガスの報告も増えてきているが,門脈内ガスをみたときに腸管壊死を念頭においた病変の検索が必要であることは変わりない.
門脈内ガスはCTで肝辺縁に樹枝状に分布する空気濃度として観察される.重力と血流の影響を受けるため,肝左葉の腹側に分布することが多く,門脈血流に乗って肝辺縁2cm以内まで達する.
胆道気腫(pneumobilia)が中枢に分布する(胆汁は求心性に流れるため)のと対照的である(参考:図4→).
非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)は血管閉塞によらない血流低下による腸管虚血/壊死をいい,腸管虚血全体の20~30%を占めるとされる.低灌流に引き続いて発生する腸管血管攣縮が原因として考えられている.ジギタリスやバソプレシン,エルゴタミンなどの薬剤が原因となることもある.虚血の程度は,局所にとどまるものから腸管の広範な壊死を生ずるものまでさまざまである.
本症例では壊死腸管に壁内気腫(pneumatosis intestinalis)を生じている.腸管虚血/壊死は実にさまざまな画像所見を呈するため,本稿ではNOMIの概略を呈示するにとどめる.詳しくは他の成書,文献を参照されたい.
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肝内に管状に空気濃度がみられたとき,胆道気腫と早合点せず,門脈内ガスの可能性を考慮することが大切である.
また,急性腹症においては腹腔内遊離ガスや腸管気腫などで「空気」 が診断の重要なポイントになることが少なくないため,腹部CTを肺野条件でも観察することが勧められる.