画像診断Q&A

レジデントノート 2013年6月号掲載
【解答・解説】1カ月以上発熱が続き抗菌薬が無効の50歳代女性

ある1年目の研修医の診断

両下肺野にすりガラス陰影があり,CTでは両側下葉にすりガラス陰影を認めます.鑑別疾患はウイルス性肺炎,薬剤性肺炎….

Answer

加湿器による過敏性肺炎(加湿器肺)

  • A1:胸部単純X線写真では両下肺野に淡いすりガラス陰影を認める (図1).CTでは両側下葉優位に汎小葉性のすりガラス陰影を認める (図2).
  • A2:過敏性肺炎,薬剤性肺炎.気管支鏡検査.

解説

外来にて抗菌薬無効の両側の肺炎で低酸素血症と乾性咳嗽を認めていた.フルオロキノロン系抗菌薬が無効であったことから一般細菌による市中肺炎,また非定型肺炎は否定的である.両側すりガラス陰影を呈する肺炎の鑑別として,ウイルス性肺炎,過敏性肺炎,薬剤性肺炎などがあげられる.

入院後気管支鏡検査を行い,気管支肺胞洗浄 (BAL) では細胞数の増加を認め,分画ではリンパ球が51%と著明に増加,一般細菌,抗酸菌は陰性,細胞診も陰性であった.入院後徐々に咳の減少とともに酸素化と陰影の改善を認め(図3),入院(抗原からの隔離)によって改善する過敏性肺炎が疑われた.生活歴を詳細に聴取したところ,超音波加湿器を洗浄せずに24時間作動させ続けていたことが判明し,加湿器による過敏性肺炎(加湿器肺)が疑われた.自宅の環境調査を行ったがその他過敏性肺炎の原因として疑われるものはなく,加湿器肺と診断し,超音波加湿器の使用を禁止した.環境整備として室内およびエアコン内部の清掃を行った後,自宅退院となった.その後再発を認めていない.

過敏性肺炎は詳細な病歴聴取にて疑うことのできるびまん性肺疾患で,抗原回避で改善することが特徴的である. 空調病や加湿器肺を含む換気装置肺炎は,過敏性肺炎の4.3%と報告されている1).加湿器のなかでも超音波加湿器はコンパクトで安価で購入でき,加温されないため熱傷の心配がないが,電源を入れたままで水をつぎ足すことができるため,清掃せずに使用を続け,タンク中や本体の水に増殖した微生物を空気中にばら撒き,それを吸入することによって過敏性肺炎を起こすことがあり,症例報告も散見される2).超音波加湿器は,大手メーカーは製造を中止,煮沸型などミストを放出しないタイプに切り替え,その後加湿器肺は減少していたが,最近ネット通販などで小規模メーカーが生産を再開,普及しつつあり,超音波加湿器による加湿器肺は増加が懸念される.感染症が否定的で,抗原回避によって改善する肺炎では過敏性肺炎を疑い詳細な病歴聴取を行うことが重要で,そのなかでも加湿器肺,特に超音波加湿器によるものは今後も注意が必要である.

図1 胸部単純X線写真
図2 胸部CT
図3 退院前の胸部単純X線写真

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文献

  1. 過敏性肺炎.「呼吸器専門医テキスト」(工藤翔二 ほか/編),p.449,南江堂,2007
  2. Koschel, D., et al.:Extrinsic allergic alveolitis caused by misting fountains. Resp Med, 99:943-947, 2005

プロフィール

七海 香(Kaori Nanami)
社会保険中央総合病院 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
社会保険中央総合病院 呼吸器内科
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