画像診断Q&A

レジデントノート 2014年5月号掲載
【解答・解説】頭部外傷後.骨折や出血以外の所見も注目しよう!

Answer

内頸動脈海綿静脈洞瘻

  • A1:右上眼静脈の拡張を認める(図12).外眼筋も対側と比較して軽度だが腫大している(図2は上直筋).
  • A2:特徴的な所見,症状から内頸動脈海綿静脈洞瘻が強く疑われる所見である.本症例はその後MRI, 血管造影で精査が行われ,(直接型)内頸動脈海綿静脈洞瘻の診断が確定された.

解説

内頸動脈海綿静脈洞瘻(carotid-cavernous fistula:CCF)は,内頸動脈と海綿静脈洞の間に瘻孔を形成する特殊な動静脈瘻である.CCFは内頸動脈本幹に瘻孔を形成する直接型と,内頸動脈・外頸動脈の硬膜枝が瘻孔を形成する間接型に分類される.後者は海綿静脈洞部に形成された硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula:dAVF)であり,別の疾患概念であるとする意見もある.

発症の様式から外傷性と特発性に分類され,外傷性が最も多い.直接型CCFのほとんどは外傷性であり,間接型CCFは特発性であることが多い.

海綿静脈洞からの流出路は,上眼静脈や上・下錐体静脈洞などである.上眼静脈への逆流が著明な前方型では眼症状が,後方の横~S状静脈洞や内頸静脈に流出する後方型では拍動性雑音が認められやすい.

CCFの症状は,眼球突出・結膜充血・複視・視力低下・拍動性雑音・頭痛などがあげられる.また,脳出血や緑内障を生じることもある.

大半は受傷後1週間~1カ月ほど経過してから発症するが,約3割は受傷後24時間以内に発症するとされる.遅れて発症する理由として,仮性動脈瘤が遅れて破裂する,血腫などで閉塞していた瘻孔が再開通する,といった機序が考えられている.

画像検査では患側の海綿静脈洞の拡大や上眼静脈の拡張が認められる.外傷性では,海綿静脈洞近傍部に頭蓋底骨折を伴うことが多い.また,眼球突出や外眼筋の腫脹を認めることもある.CTで上眼静脈の拡張を指摘することが診断の足がかりとなる.MRIでは,T2WIで患側の海綿静脈洞にflow void(速い血流による無信号)を認める.TOF-MRAでは,海綿静脈洞内に速い血流を示す高信号が出現し,上眼静脈・下錐体静脈洞といった流出路も描出される.正常例でもTOF-MRAで海綿静脈洞,下錐体静脈洞が描出されることはしばしばあり,この所見をもって本疾患と早合点してはいけない.造影剤を用いたMR-DSAを撮影し静脈の早期描出を確認することで上に述べた偽病変との鑑別が可能である.

直接型CCFは血流が速く(high-flow)自然治癒が期待できないため,治療の適応となる.第一に血管内治療(経動脈的塞栓術)が選択される.間接型については自然治癒する症例もみられるが,治療の適応となったときは経静脈的塞栓術や経動脈的/経静脈的塞栓術の併用で治療が行われる.血管内治療が困難な症例では外科的治療が検討される.

図1
図2
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<まとめ>

頻度は高くないが,内頸動脈海綿静脈洞瘻は頭部外傷の合併症として重要な疾患である.初回CTでは所見がなくフォロー中に現れることも多い.上眼静脈の拡張に気づくことが診断の足がかりとなるため,頭部外傷の症例では本疾患を念頭においたうえで診療,読影にあたりたい.

参考文献

  1. 日向野修一,江面正幸:脳血管奇形.「脳血管障害の画像診断」(高橋昭喜/編著),pp.254-276,中外医学社,2003

プロフィール

羽入田 明子(Akiko Hanyuda)
慶應義塾大学病院
田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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