画像診断Q&A

レジデントノート 2014年5月号掲載
【解答・解説】胸膜炎疑いで紹介受診した60歳代女性

ある1年目の研修医の診断

左横隔膜が上がっていて,横隔神経麻痺なのかなあ? あるいは肺下胸水ということもありうるし….

Answer

孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor)

  • A1:左下肺野に占拠性病変があり,左肺は容積が縮小している(図1).CTでは,左胸腔下部に石灰化(図2)を伴う,内部濃度不均一な巨大腫瘤を認める(図2).明らかな胸壁浸潤は認めない.
  • A2:孤立性線維性腫瘍,胸膜中皮腫などを疑い,組織生検を考慮する.

解説

本症例は,孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor:以下SFTとする)の典型例である.

自覚症状に乏しく,10年近い緩徐な経過,石灰化を伴う腫瘤であることが診断のカギとなる.

胸膜原発のSFTは,胸膜中皮下の間葉組織を発生母地とする比較的稀な腫瘍であり,臓側胸膜から有茎性に胸腔内へ発育することが多い.これまでに800例程度の報告がある.自覚症状は胸痛,咳嗽,呼吸困難などがあるが,半数以上は無症状で経過する.腫瘍随伴症候群として肺性肥大性骨関節症が特徴的な症状の1つとされるが,その頻度は2%前後である.約8割は良性であり,15~20年以上経過して診断される例もある.胸膜発生が最も多いが,ほかには髄膜,頭頸部,腹膜,骨盤腔,体幹などさまざまな部位に発生する.

CT画像では境界明瞭な分葉状の腫瘤で,内部は不均一である場合が多く,出血や壊死を伴うと低吸収を示す.石灰化は良性に多いが,悪性でも伴いうる.病理所見は,patternless patternともいわれ,紡錘形の腫瘍細胞が規則性のない配列で増殖する.確定診断には免疫染色が必要であり,約8割がCD34陽性となる.良性悪性の診断にはEnglandらの基準が用いられ,① 細胞密度の増加,② 強拡大10視野に4個以上の核分裂像,③ 核の多型性,④ 出血または壊死の4つを組織学上悪性の所見とする.治療は良性悪性を問わず手術が第一選択であり,切除断端に腫瘍浸潤がなければ予後は良好であるが,転移や再発する例もある.

本症例では,自覚症状は全くなく,過去の画像は入手できなかったが,10年近くの緩徐な経過であること,石灰化を伴う巨大な腫瘤であることからSFTを第一に考えた.胸膜中皮腫は,粉塵曝露歴がなく,経過が緩徐であるため考えにくい.なお胸部単純写真では横隔神経麻痺による横隔膜挙上も鑑別として考えうるが,その場合は挙上した横隔膜下に胃泡がみられるはずである.

診断確定のために経皮的針生検を施行したところ,線維性結合織内に紡錘形細胞が規則性のない配列で増殖しており,免疫染色にてCD34陽性,核分裂像は乏しく,良性のSFTが疑われた.治療として開胸手術を施行,胸膜の癒着はほとんどなく,葉間胸膜の下葉側に茎を有する20 cm大の腫瘍を認め,腫瘍摘除術および左下葉部分切除術を施行した.最終病理診断は良性のSFTであった.

図1
図2
図3
図4
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参考文献

  1. England, D. M., et al.:Localized benign and malignant fibrous tumors of the pleura. A clinicopathologic review of 223 cases. Am J Surg Pathol, 13:640-658, 1989

プロフィール

笠井 昭吾(Shogo Kasai)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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