画像診断Q&A

レジデントノート 2014年9月号掲載
【解答・解説】産褥出血の原因は?

Answer

胎盤ポリープ(placental polyp)

  • A:子宮前壁から内腔に向かって突出するポリープ状の腫瘤を認める(図2A).単純CT(図1)では不明瞭であるが,ダイナミックCT動脈相(図2A,C)で強い濃染がみられ,強い血流が示唆される.遅延相(図2B)で子宮筋層と同程度の造影効果がみられるが,子宮内腔への造影剤の血管外漏出(extravasation)はなく活動性出血を示唆する所見はない.経過と併せて胎盤ポリープ(胎盤遺残)が強く疑われる所見である.本症例は待機的に子宮動脈塞栓術を行った(図3)後子宮鏡下での切除が行われた.

解説

胎盤ポリープは分娩後や中絶,流産後に残存した胎盤組織が腫瘤を形成し,ポリープ状に増大したものである.組織学的には遺残した胎盤片がフィブリン沈着や硝子化,炎症性変化を伴う壊死像を呈する.本邦においては胎盤遺残と胎盤ポリープを区別しているが,欧米ではretained placentaとして一括して扱っている.ただ,胎盤遺残は分娩直後に発症して血流が乏しく血中hCG高値となることが多い一方,胎盤ポリープは分娩後数週間経って発症し,強い造影効果を有して血中hCGは低値であることが多い,と区別される1)

胎盤ポリープの多くは流産後または分娩後数週間で発症するが,数年を経過して発症した報告もある.以前は盲目的で安易な子宮内掻爬,除去術が行われ大出血をきたし,止血困難例では子宮摘出が必要になることがあった.近年ではエコーやCT,MRIなどの画像診断装置の発達もあり術前に診断されるようになり,後述のように安全な治療を選択することが可能になった.

胎盤ポリープはBモードエコーで子宮内腔に突出する不均一な高エコー腫瘤として描出され,カラードプラでは腫瘤内部に強い血流信号が認められる.CTやMRIでも腫瘤内部に強い血流が認められることから診断は比較的容易である.鑑別として絨毛性疾患があげられるが,絨毛性疾患では血中hCGが異常高値となることから鑑別可能である.

治療法は症例ごとに出血量や病変のサイズ,今後の挙児希望が異なるためさまざまな選択肢を取りうる.子宮動脈塞栓術(UAE)を行い,血流を遮断/低下させたうえで子宮鏡下切除術を基本治療としているが,治療の介入を行わず経過観察を行うのみで血流の減少/消失がみられ自然に消失/排出されるという報告もあり,患者の状態によっては経過観察も考慮される.

UAEは高い治療成績を有する有効な治療法であるが,塞栓が卵巣にも及ぶことによる卵巣機能の低下や今後の妊娠への影響が懸念される.Salomonらは産褥出血に対してUAEを施行した17症例を検討し,全例の月経再開と5例の妊娠,4例の分娩を報告している2)ことから卵巣機能や妊孕能はある程度保たれるのではないかと考えられる.

薬剤療法としてメトトレキサート(MTX)投与も報告されているが,患者の多くが授乳中である点や骨髄抑制が存在する点が問題となる.また,そもそも薬剤療法の適応となるような症例では経過観察のみでも自然消退することがありMTXの果たす役割は明らかでないと考えられる.

図2 受診時腹部ダイナミック造影CT
図3 骨盤血管造影

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<まとめ>

胎盤ポリープは産褥晩期の出血をきたす重要な疾患である.安易な掻爬は大量の出血をきたす.特徴的な画像所見を呈することから覚えておきたい疾患である.

文献

  1. 秋山直子,他:症例 胎盤ポリープに対して動脈塞栓術を施行した2例.臨床放射線,57:820-824, 2012
  2. Salomon LJ, et al:Fertility and pregnancy outcome following pelvic arterial embolization for severe post-partum haemorrhage. A cohort study. Hum Reprod, 18:849-852, 2003

プロフィール

田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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