画像診断Q&A

レジデントノート 2015年1月号掲載
【解答・解説】突然の胸背部痛.気づきにくい疾患ですが,目をこらして見てみましょう.

Answer

脊髄硬膜外血腫

  • A1:下位胸椎-上位腰椎脊柱管内
  • A2:硬膜外血腫

本症例は神経症状が軽微であったため内服薬のイコサペント酸エチルを中止のうえで保存的に治療が行われ,自然軽快し退院となった.

解説

脊髄硬膜外血腫は比較的稀な病態で10万人に0.1人の罹患率とされているが,画像検査の進歩により近年では発見されることが多くなった疾患である.

臨床症状として突然の頸部・背部痛および放散痛,進行性の対麻痺,感覚障害,膀胱直腸障害があげられる.突然の背部痛をきたすことからときとして大動脈解離などの大血管疾患と誤診されることもあり,病変の発見・治療方針の決定において画像の果たすべき役割は大きい.

病因としては,軽微な外傷や抗凝固薬,一過性の静脈圧上昇(咳やくしゃみ,いきむなどValsalva効果をきたす行為),椎間板ヘルニアや血管奇形,妊娠やPaget病などが報告されているが原因不明のものも多い.

好発部位は上部胸椎と下部頸椎である.血腫は脊髄の背側に位置することが多く,これは腹側において後縦靱帯と硬膜が癒合しているためと考えられている.ただし血腫が腹側にみられたとの報告もある.

頭部の硬膜外と違って脊髄硬膜外血腫は静脈性の出血と考えられている.硬膜外静脈叢には弁がないため,胸腔/腹腔内圧の上昇により静脈叢内圧が上昇し破裂する.

CTでは脊柱管内,脊髄外に高吸収を示す腫瘤として認められる(図1).突然の背部痛の場合,多くの症例で大血管疾患を疑い,または除外診断のためCTが撮影されるが,本症を意識したうえで注意して観察を行わなければ病変の発見自体が困難であろう.

MRIでは48時間以内(文献によっては24時間以内)の血腫はT1WIで等信号,T2WIで高信号,亜急性期以降になるとT1WIで高信号となるとされる.画像上の鑑別疾患は硬膜外膿瘍,硬膜外転移,リンパ腫がある.硬膜外膿瘍は感染性脊椎炎,椎間板炎を伴うことから鑑別可能である.腫瘍性病変の除外のためには造影MRIが有用であり(図2),本症では腫瘤の辺縁のみに造影効果がみられることが多いのに対して腫瘍性病変では腫瘤全体に強い造影効果がみられる.

治療法は手術による除圧と保存療法の両方が報告されている.一般的に高度の神経症状がみられる症例では観血的治療が,自然に改善傾向にあるものは保存的な治療が選択される.本稿は画像診断を中心に記載しているので,治療の詳細については成書,文献を参照されたい.

図1 胸部単純CT
図2 頸部MRI

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<症例のポイント>

突然の胸痛・頸部痛・背部痛をみたときは脊髄硬膜外血腫も鑑別疾患に考える.

CTで脊柱管内の高吸収を発見したらMRIで確定診断を行う.

プロフィール

田村 謙太郎(Kentaro Tamura)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎 雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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