画像診断Q&A

レジデントノート 2015年7月号掲載
【解答・解説】健診の胸部X線像で異常を指摘された40歳代女性

Answer

粟粒結核

  • A1:両側上肺野の多発結節影,縦隔リンパ節の腫大
  • A2:原発性肺癌(縦隔リンパ節転移,肺内転移),転移性肺腫瘍を疑い,CT,抗酸菌検査,気管支鏡検査などを行う

解説

胸部単純X線写真(図1)では両肺に,肺尖から上肺野にかけて多数の結節影(図1)と縦隔リンパ節の腫大(図1)を認める.上肺野優位の多発結節影,ということで,原発性,転移性の肺腫瘍が疑われる.CT縦隔条件(図2)でも縦隔リンパ節の腫大が認められる(図2).しかしCT肺野条件(図3)を丁寧に読影すると,数mm大の結節のほかに,微小粒状影がびまん性にみられ(図3),その分布はランダムである.また,結節から末梢側に伸びる線状影,一部tree-in-bud様の所見が指摘される(図3).以上の画像所見より結核症,特に粟粒結核を疑い,検査を進めた.

外来にて3日間の吸入誘発痰により抗酸菌の検出を試みたが塗抹,PCRともに陰性であったため,気管支鏡検査を行った.擦過,洗浄で塗抹,PCRは陰性であったが,3週後,喀痰の培養で結核菌が検出された.T-spot®. TBも陽性で,結核症と診断,イソニアジド(INH),リファンピシン(RFP),エタンブトール(EB),ピラジナミド(PZA)の4剤による標準治療を開始した.その後は順調な改善を得ている.

粟粒結核(miliary tuberculosis)とは,結核菌が血行性に全身に散布され,複数の臓器にびまん性に微小結核結節を形成する病態をいう1).初感染に引き続いて肺門,縦隔のリンパ節病変から静脈角を経て血中に移行する早期蔓延型と,肺,腎,骨,リンパ節などいったん治癒した病巣の内因性再燃からの晩期蔓延型にわかれる.本例は縦隔リンパ節の腫大もあり,初感染からの早期蔓延型と考えられる.年間の発生率は全結核の1%程度と少ないが,診断の遅れが致命的となる(死亡率15~20%)疾患なので1),臨床の場において常に本症の可能性についての注意が必要である.

臨床症状としては発熱が最もよくみられ(出現率は80~90%),咳,痰などの呼吸器症状は少ない.通常は不明熱として,同様の病状を呈しうる膠原病,悪性腫瘍などの鑑別に苦慮する.今回のように健診発見の症例は稀である.

粟粒結核の典型的な胸部CT所見は,全肺野にびまん性に広がる1~3mm大の微細結節であり,既存の小葉構造とは無関係なランダムな分布を示す2).その点では本例にみられた数mm大の結節は非典型的な所見ではあるが,決して稀というわけではない.粟粒結核の肉芽腫の1つ1つは間質(肺胞壁)に生じるが,その一部はやがて気腔に破れ,その後は管内性に展開する3).この現象は上背部に多くみられる.本例のCT肺野条件でも結節影の一部に線状影が連続しており(図3),末梢側の病巣が破れ,管内性に進展し結節影形成に至ったことが推定される.

なお,近年罹患者数が増加しつづけているHIV感染症でも結核症は重要な併発疾患であるが,しばしば肺門や縦隔のリンパ節腫大がみられ,本例に類似した所見を呈するので,留意したい2).本患者はHIV感染はなかった.

図1 来院時胸部単純X 線写真
図2 胸部CT(縦隔条件)
図3 胸部CT(肺野条件)

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文献

  1. 「医療者のための結核の知識 第4版」(四元秀毅 他/著),医学書院,2013
  2. 「胸部のCT 第3版」(村田喜代史 他/編),メディカル・サイエンス・インターナショナル,2011
  3. 「結核の病理(復刻版)」(岩崎龍郎/著),結核予防会,1976

プロフィール

江本 範子(Noriko Emoto)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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