左肺野にすりガラス影があり,左上肺野と中肺野に浸潤影があります.右下肺野にも浸潤影があります.鑑別は,乳癌再発,結核,真菌感染症….
胸部単純X線写真では,左上中肺野は背景にすりガラス影を呈し,上肺野と中肺野に浸潤影を認める.また,右上肺野の鎖骨外側の胸膜下に円形の淡い浸潤影,右下肺野外側末梢側に浸潤影を認めた(図1○).
抗菌薬無効の浸潤影の鑑別としては,耐性菌性肺炎,クリプトコッカスなどの真菌感染症,薬剤性肺障害,器質化肺炎,肺癌(高分化腺癌),悪性リンパ腫などがあげられる.本例は,1年以内に左乳癌術後に放射線治療が行われていた臨床経過から,乳癌放射線治療後に生じた器質化肺炎を最も疑った.
胸部CTでは,内部に濃淡のある浸潤影(図2○)や,周囲にすりガラス影を伴う浸潤影(図3○),中心部がすりガラス影でその周辺を濃度上昇が取り囲む陰影(reversed halo sign:図2→)を認めた.なお,reversed halo signは器質化肺炎で特徴的とされるが,ほかの疾患でもみられることがある.
確定診断のため気管支鏡検査を行い,器質化肺炎の病理所見を得た.本例は自己免疫疾患を疑う身体所見,検査所見を認めなかった.乳癌放射線治療後の器質化肺炎と診断してステロイド治療を行った.
乳癌放射線治療後の器質化肺炎は多数の報告がなされている.乳癌治療に併用されている内分泌治療薬については,発症への関与を示唆する意見もあるが1),その関与は否定的とする報告が多い2).
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