画像診断Q&A

レジデントノート 2016年6月号掲載
【解答・解説】腹部膨満感で受診した70歳代男性.原因は?

Answer

S状結腸軸捻転

  • A1:CTのスカウト像で著明に拡張したS状結腸を認め,いわゆるcoffee bean signを呈している(図1).CTではS状結腸および口側の腸管に拡張(図23)を認める.S状結腸の口側および肛門側の2カ所に嘴状の狭窄を認める(図23口側→◯,肛門側→◯).CT冠状断ではS状結腸間膜が渦巻き状に描出されるwhirl sign(図4)を認め,捻転を示唆する所見である.腸管壁の造影効果は保たれており,腸管虚血はないものと考えられた.
  • A2:S状結腸軸捻転と診断された.腸管虚血を示唆する所見がないので,絶食および経過観察にて保存的に治療された.

解説

急性腹症診療ガイドラインより,腸管内に液体やガスが病的に貯留停滞した状態は,物理的閉塞によるものが腸閉塞,腸管蠕動の異常による(閉塞起点のない)ものがイレウスと分類される.S状結腸軸捻転は手術歴のない腸閉塞のうち腫瘍性のものを除くと最も頻度が高い1).S状結腸は係蹄が緩い一方で固定点同士が近接しているため捻転しやすく,特に解剖学的にS状結腸間膜が長く,幅の広い患者に生じやすいとされる2).S状結腸軸捻転は,女性においては骨盤腔が広く捻転が解除されやすいために頻度は少なく,男性に多いとされている.本症例のように高齢,長期臥床や神経筋疾患,精神疾患などを合併し,ADL(activities of daily living)が低下している患者に多く発症する1).また,妊婦や腸管固定異常のある場合には若年者にも発症しうる2)

診断は,腹部X線像あるいはCTスカウト像にて腸管ガスで拡張したS状結腸ループがコーヒー豆状の陰影として描出されるcoffee bean signを認めることや,腹部CTでのS状結腸の狭窄機転および腸間膜が捻転し渦巻き状に描出されるwhirl signを指摘することでなされる3,4)

治療は腸管穿孔や壊死を認めない場合では内視鏡的整復が選択され,汎発性腹膜炎,腸管穿孔・壊死が疑われる際には外科的切除が選択される5)

ADL低下を生じる基礎疾患がある高齢男性に,coffee bean signやS状結腸間膜に一致してwhirl signを認めた際には,S状結腸軸捻転を第一に考えたい.

図1 図2 図3 図4

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文献

  1. 小西真理世,他:当科におけるS状結腸軸捻転症に対する治療方針.Progress of Digestive Endoscopy, 72:38-41, 2008
  2. 岡田剛史,他:S状結腸軸捻転症20例の臨床的検討.日本腹部救急医学会雑誌,34:1089-1094, 2014
  3. Feldman D:The coffee bean sign. Radiology, 216:178-179, 2000
  4. Khurana B:The whirl sign. Radio-logy, 226:69-70, 2003
  5. Lou Z, et al:Appropriate treatment of acute sigmoid volvulus in the emergency setting. World J Gastroenterol, 19:4979-4983, 2013

プロフィール

横山陽一(Yoichi Yokoyama)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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