画像診断Q&A

レジデントノート 2016年8月号掲載
【解答・解説】炎症反応高値,便通異常が続く中年男性

Answer

消化管アミロイドーシス

  • A1:小腸壁の軽度肥厚および腸管内の液体貯留(図12)を認め,横行結腸~直腸まで連続的にハウストラの消失,腸管壁の肥厚と造影効果(図13)を認めた.腸間膜脂肪織は全体的に濃度上昇を認めた.また,非提示であるが,腋窩や縦隔,鼠径のリンパ節の軽度腫脹を認め,反応性腫大と考えられた.
  • A2:血液検査での炎症反応高値,およびCT所見から炎症性腸疾患(Crohn病,Behçet病,潰瘍性大腸炎),感染性腸炎,消化管アミロイドーシスが鑑別疾患としてあげられた.本症例は,消化管内視鏡での十二指腸,回腸,結腸からの生検により,AAアミロイドーシスと診断されたが,関節リウマチなどの基礎疾患は認めなかった.

解説

アミロイドーシスは,全身の臓器や組織にアミロイドが沈着することで機能障害をきたす疾患である.アミロイドーシスは,アミロイドの前駆タンパクが血中に存在し,全身を循環して臓器に沈着する全身性と,アミロイド前駆タンパクが特定臓器で産生され局所に沈着する限局性に分類される1).さらに,両者はアミロイド構成タンパクの化学的性状と臓器障害の進展様式の違いにより細分化される.アミロイドーシスの確定診断は生検で行われ,病理学的にcongo red染色で橙赤色に染まり,偏光顕微鏡下で緑色の偏光を呈する物質として同定される.

消化管では多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症によるALアミロイドーシス,透析によるβ2-microglobulinアミロイドーシス,関節リウマチや炎症性腸疾患,Castleman病など慢性炎症性疾患によるAAアミロイドーシスがみられる2).消化管に沈着したアミロイドを画像でとらえることは,高度の症例を除いて通常困難であるが,血管壁への沈着による二次的な虚血に伴う壁肥厚や腸管平滑筋障害,壁在神経叢障害による消化管運動低下を間接的にとらえることは可能である3).胃アミロイドーシスは症状を呈することは少ないが,CTで胃壁肥厚が認められることがある.小腸アミロイドーシスでは,腹痛,下痢,出血などの症状を呈することが多く,CTでは壁肥厚,腸管拡張,腸間膜脂肪の吸収値上昇がみられる4).大腸アミロイドーシスのCT所見では,狭窄,壁肥厚,拡張,巨大憩室の穿孔が報告されているが4),麻痺性イレウスによる拡張が一般的である.

消化管アミロイドーシスは多くの炎症性消化管疾患と同様の画像所見を示すため,それのみでの診断は困難であり,臨床所見を加味した総合的判断が必要となる3).また,AAアミロイドーシスは,基礎疾患に関節リウマチなどの慢性炎症性疾患をもつ患者が多いことが知られているが,本症例のように基礎疾患を特定できない患者も21%存在するという報告もある5)したがって,画像上,炎症性消化管疾患が疑われた場合は,基礎疾患のない患者でも消化管アミロイドーシスを鑑別疾患の1つにあげておく必要がある.

図1 来院時腹部造影CT 図2 来院時腹部造影CT(図1より尾側) 図3 来院時骨盤部造影CT

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文献

  1. 福田国彦:序説.アミロイドーシスの画像診断update.画像診断,32:1099, 2012
  2. 「わかる! 役立つ! 消化管の画像診断(画像診断別冊KEY BOOKシリーズ)」(山下康行/編著),学研メディカル秀潤社,2015
  3. 宗像浩司,他:腹部:超音波診断.アミロイドーシスの画像診断update.画像診断,32:1164-1175, 2012
  4. Kim SH, et al:Abdominal amyloidosis:spectrum of radiological findings. Clin Radiol, 58:610-620, 2003
  5. Bunker D & Gorevic P:AA amyloidosis:Mount Sinai experience, 1997-2012. Mt Sinai J Med, 79:749-756, 2012

プロフィール

舩引奈緒子(Naoko Funabiki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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