画像診断Q&A

レジデントノート 2017年2月号掲載
【解答・解説】左半身に筋力低下や感覚障害をきたした10歳代女性

Answer

脳静脈洞血栓症

  • A1:単純CT(図1)では,皮質静脈が高吸収()となっており,血栓の存在が疑われる.
  • A2:MRI拡散強調像(図2)では右頭頂葉に高信号領域()が疑われ,静脈性梗塞の可能性がある.その後,造影CT(図3,4)が施行され,閉塞した皮質静脈は描出されず,上矢状静脈洞の血栓が低吸収に描出された().12日後のMRI T2強調像(図5)では右頭頂葉の梗塞巣が明瞭化している().

解説

拡散強調像高信号の所見,左半身の症状や身体所見と合わせると,脳梗塞が最も疑われるであろう.しかし,一般的な脳梗塞としては年齢が若く,梗塞の領域が非典型的である.単純CTで皮質静脈の血栓が示唆され,造影CTで脳静脈洞血栓症と診断することができる.拡散強調像の高信号は静脈性梗塞をきたしたことによる所見である.

脳静脈洞血栓症は,静脈洞や静脈洞に還流する中枢側皮質静脈に血栓が形成される病態であり,静脈性浮腫,静脈性梗塞,静脈性出血をきたす.好発年齢は特になく,小児から高齢者まで発症しうる1)

新鮮な血栓は単純CTで高吸収を示す.しかし,この所見は患者のヘマトクリット値に左右され,血栓がなくても高吸収にみえる例もあるため注意しなければならない2).確定診断には造影CTが有用で,静脈洞内血栓では血栓が相対的に低吸収域に見えるempty delta signという所見が特徴的である.本症例でも造影CTが追加で実施され,静脈洞内の血栓が描出された.

炎症性腸疾患や肝硬変が脳静脈洞血栓症の基礎疾患となることが知られており,今回の症例では既往歴に潰瘍性大腸炎があった.そのほかには,感染症,プロテインC欠損,アンチトロンビンⅢ欠損,抗リン脂質抗体,抗カルジオリピン抗体,Behçet病,悪性腫瘍,妊娠,経口避妊薬などが脳静脈洞血栓症の原因となりうる3)

若年者や動脈支配領域に一致しない非典型的な脳梗塞を見たときには脳静脈洞血栓症を鑑別診断の1つとして考えてほしい.

図1
図2
図3
図4
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文献

  1. 「脳のMRI」(細矢貴亮, 興梠征典, 三木幸雄, 山田 惠/編),メディカル・サイエンス・インターナショナル,2015
  2. 「ここまでわかる頭部救急のCT・MRI」(井田正博/著),メディカル・サイエンス・インターナショナル,2013
  3. 伊藤康男, 荒木信夫:脳卒中専門医に必要な基本的知識(8)脳静脈洞血栓症. No Shinkei Geka,43:259-268, 2015

プロフィール

清水 淳(Atsushi Shimizu)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
松本俊亮(Shunsuke Matsumoto)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
陣崎雅弘(Masahiro Jinzaki)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
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