画像診断Q&A

レジデントノート 2017年9月号掲載
【解答・解説】“ある物”を誤飲したとして来院した80歳代女性

Answer

食道異物(PTP誤飲)

  • A1 :press through package(PTP)の誤飲.胸部下部食道内に,長方形状のガス貯留(図1,2,3)と線状の高吸収域(図1,2,3)を認める.この像はPTPの形態に合致しており,PTP内に錠剤も確認できる.食道周囲に脂肪織の混濁や液体貯留,縦隔気腫は認められない.消化管のその他の領域に第2のPTPは認められない(非掲載).
  • A2 :食道内に滞留するPTPは緊急内視鏡の適応である.本症例でも経内視鏡的に摘出を試みた.食道内に停留するPTPの周囲の粘膜に凝血塊の付着はみられるが裂創はなかった(図4).粘膜損傷防止のためオーバーチューブ,先端にフードを装着した内視鏡を用いPTPを摘出した.外来でプロトンポンプ阻害薬の内服薬を処方し帰宅とした.

解説

press through package (以下PTP) は,耐久性,保存性,衛生面などに優れた薬剤包装形態として1960年代に登場し,臨床現場で広く使われている.普及につれPTPの誤飲の報告が散見され,異物誤飲としては高頻度にみられる.PTPは鋭利な角により消化管粘膜を傷害し,長く消化管に滞留することで消化管浮腫や穿孔・穿通の原因になりうる.このため,小腸や結腸の穿孔による腹膜炎で開腹手術が施行された報告がしばしば存在する.

誤飲されたPTPの多くは食道入口部〜胃に停留し,このようなPTPは消化器内視鏡ガイドラインでは緊急内視鏡の適応とされている.CTでは合併症としての裂創や潰瘍自体を見ることはできないが,随伴所見である消化管周囲の脂肪織混濁や縦隔気腫,free airの有無を確認可能である.

消化管異物は誤飲のみならず故意の場合があり,異物を1つ見つけたらほかにも存在しないか確認することも重要である.病歴聴取においては,認知症や精神疾患などの患者背景を確認すること,PTPなどの誤飲の可能性(空殻の数など)を本人や家族に確認することが必要である.

本疾病の読影のポイントは2つである.

  • 臓器構造を追跡する際に消化管構造の追跡を忘れないようにすることが重要である.食道内腔・周囲は一般的に病変が存在することが少ないため,誤飲が未知である場合に変化を見落とす危険性がある.PTP誤飲単体では,食道内腔の拡張や周囲変化に乏しい,といった本症例のようなCT像を呈することを知っておくとよい.
  • CT撮影の際に病変のtargetに応じて,window条件を適宜調整する図3のごとくwindow widthを広げ肺野条件に近い条件にするなど)と病変の構造の把握が容易となることを知っておくとよい.人工的な形態を示すガス像あるいは,線状やシート状の高吸収域の存在があれば,PTPを容易に同定可能である.ただし,PTPが空殻の場合はパッケージ内にガス像がみられず同定に苦慮することもあるとされる.
図1
図2
図3
図4
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参考文献

  1. 上原正義,他:内視鏡的に摘出した上部消化管異物104例の臨床的検討.日本消化器内視鏡学会雑誌,52:1243-1249,2010
  2. 「消化器内視鏡ガイドライン 第3版」(日本消化器内視鏡学会/監),医学書院,2011
  3. 川田三四郎,他:異なるCT像を呈したPress Through Packageによる消化管穿孔の2例.日本腹部救急医学会雑誌,35:619-622,2015

プロフィール

今井祥吾(Shogo Imai)
日本医科大学付属病院 放射線科
関根鉄朗(Tetsuro Sekine)
日本医科大学付属病院 放射線科
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