画像診断Q&A

レジデントノート 2017年10月号掲載
【解答・解説】突然の意識障害,左不全麻痺を発症した70歳代男性

Answer

脳動脈空気塞栓症(cerebral arterial air embolism)

  • A1:CTでは右中大脳動脈領域の脳溝や被殻に分布する線状の低吸収域を認める(図1 ).この低吸収域は,頭蓋周囲の空気と同等の吸収値を示す.中大脳動脈の皮質動脈や穿通枝の走行に一致して,血管内の気腫が描出されていると考えられる.
  • A2:高圧酸素療法などの初期治療を開始後,状態が安定してから精査目的にてMRIを施行した.DWI (拡散強調画像)では右中大脳動脈領域の急性期脳梗塞を認めた(図2 ).CTでの気腫の所見とMRIの所見から脳動脈空気塞栓症と診断した.

解説

脳動脈空気塞栓症は,医療行為によって肺静脈あるいは動脈に直接空気が流入することで生じる重篤な合併症である.脳動脈内に分布する空気より末梢の灌流が低下し,末梢の脳実質が虚血に陥る.

画像での診断のポイントは ① 頭蓋内の気腫を見逃さないこと,② 気腫の分布や形態からそれが血管内に存在していると把握すること,の2点であるが,診断のうえで最も重要となるのは病歴で,術後や座位でのCV抜去後に多く報告されている.

本症例では経胸壁心臓超音波検査で卵円孔開存が認められ,RLシャントによる脳動脈空気塞栓症と考えられた.発症時,患者は右内頸静脈からCVが挿入されていた.このように,RLシャントを有する患者では点滴ルートからの少量の空気によって脳動脈空気塞栓症を発症する可能性があり,ルート確保の際には十分に注意する必要がある.

脳動脈空気塞栓症は致命的になりうる疾患であるが,早期に診断され高圧酸素療法を中心とした適切な治療を行えば,約40%は後遺症なく回復するとの報告がある1).病歴および画像所見を把握し,本疾患を見逃さないことが重要である.

図1
図2
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文献

  1. Pinho J, et al:Cerebral gas embolism associated with central venous catheter:Systematic review. J Neurol Sci, 362:160-164, 2016

プロフィール

岩田琴美(Kotomi Iwata)
日本医科大学付属病院 放射線科
関根鉄朗(Tetsuro Sekine)
日本医科大学付属病院 放射線科
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