画像診断Q&A

レジデントノート 2018年6月号掲載
【解答・解説】けいれん,意識障害で搬送された5カ月女児

Answer

虐待の疑いのある乳幼児頭部外傷(abusive head trauma:AHT)

  • A1 :頭部MRI拡散強調でU-fiber病変(図1)および後頭部異常信号を認めた(図1).頭部CTでは大脳半球間裂から円蓋部にかけて,あるいは小脳テントに沿って高吸収域が存在した(図2).頭部CTの骨条件を追加,3Dによる再構成を行い読影する.急性脳症などの内因性疾患も考え,各種血液,髄液検査などを行う.
  • A2 :虐待によるAHTを疑って詳細な病歴聴取を行い,虐待の可能性が高ければ院内虐待委員会に報告し,児童相談所へ報告する.

解説

頭部外傷によっても意識障害やけいれん,頭部MRIでbright tree appearanceを呈する場合があり,急性脳症と間違えられることがある.AHTで最も多い頭蓋内出血は硬膜下血腫であり,本症例のように大脳半球間裂から円蓋部にかけて,あるいは小脳テントに沿って存在することが知られている1)

外傷を想定していないと骨条件がデフォルトとして提示されないことも多い.この症例も骨条件で読影すると側頭部に骨折を認める(図3A).3D再構成するとさらに認識しやすくなる図3B).本症例では眼底出血は認めていない.

本邦における児童虐待・ネグレクト件数は増加傾向にあり,厚生労働省によると死亡件数は年間50件前後とされる.特にAHTは死亡や重度後遺症に至る場合が多いため,決して見逃してはならない.

AHTは激しい揺さぶりや鈍的外傷による架橋静脈の破綻からなる硬膜下血腫であり,びまん性軸索損傷が二次的脳障害を引き起こす.受傷機転が明らかでない外傷は,一度は虐待を考慮した詳細な病歴聴取および身体所見や検査を施行すべきである.本症例では,後に母親からの病歴聴取でその受傷機転に一貫性を欠くことや,受傷機転を同胞の責任にするなどがみられた.

硬膜下出血,脳浮腫,眼底出血がAHTの三徴であるが,すべてが揃うわけではない.眼底出血は時間経過とともに判別が難しくなるため,できるだけ早期に確認した方がよいとされている.重症例では意識障害,けいれん,呼吸窮迫,無呼吸が典型症状である.AHT のprediction ruleがあるが,軽症例の感度は決してよくはない2).必ず院内虐待委員会に報告し,最終的判断を委ねることが重要である.主治医は患者家族との信頼関係構築と治療に専念できる環境づくりに努める.

図1
図2
図3
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文献

  1. Girard N, et al:Neuroimaging differential diagnoses to abusive head trauma. Pediatr Radiol, 46:603-614, 2016
  2. Berger RP, et al:Validation of the Pittsburgh Infant Brain Injury Score for Abusive Head Trauma. Pediatrics, 138:e20153756, 2016

プロフィール

禅正和真(Kazumasa Zensho)
岡山大学病院 卒後臨床研修センター
塚原紘平(Kohei Tsukahara)
岡山大学 救命救急・災害医学講座
中尾篤典(Atsunori Nakao)
岡山大学 救命救急・災害医学講座
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