画像診断Q&A

レジデントノート 2018年10月号掲載
【解答・解説】痙攣で搬送された40歳代男性

ある1年目の研修医の診断

左大脳半球に正中偏位を伴う巨大な血腫を認めます.血圧上昇を認めますので,高血圧性脳出血が考えられます.開頭血腫除去術の適応がありそうです.

Answer

左中大脳動脈瘤破裂による脳出血

  • A1 :頭部単純CT(図1)にて左側頭葉底部の皮質から皮質下に血腫を認める(A).血腫は左側脳室内に穿破し(B),正中偏位(B)も伴っている.
  • A2 :頭部CTAを行う.図2では,中大脳動脈M1から突出する動脈瘤が血腫に接している(A,B).なお,本症例では呼吸状態が不安定であるため,検査時間の長いMRIは適さない.
  • 経過 :頭部CTAが撮影され左中大脳動脈瘤破裂による脳出血と診断し,開頭血腫除去術に加えて,脳動脈瘤クリッピング術が施行された.外減圧を持続するも脳圧亢進のため,脳ヘルニアをきたし,第8病日に永眠された.

解説

脳出血は高血圧性脳出血と非高血圧性脳出血(二次性脳出血)に大別される.非高血圧性脳出血の原因として,脳動脈瘤,出血性梗塞,静脈洞血栓症,脳動静脈奇形,硬膜動静脈瘻,もやもや病,脳腫瘍,脳アミロイドアンギオパチー,外傷,凝固異常,血液疾患,薬物中毒などが知られている1)

高血圧性脳出血の好発部位と頻度は,被殻(40%),視床(30%),皮質下(10%),小脳(5〜10%),脳幹(5〜10%)である.45歳以上の高血圧の病歴を有する患者で,これらの好発部位に血腫を認めた場合には高血圧性脳出血を考える.逆に,高血圧を有さない患者,45歳未満の患者,あるいは高血圧性脳出血の好発部位以外の血腫を認めた際には非高血圧性脳出血を考慮すべきである.ただし,皮質下は高血圧性脳出血の好発部位であるが,非高血圧性脳出血でも皮質下出血が起こりうるため注意を要する2)

高血圧性脳出血では血圧コントロール,薬物や手術による頭蓋内圧の減圧が行われるが,非高血圧性脳出血ではこれに加えて,原疾患の治療を要することからさらに鑑別を進めることが重要である.そのため,① 高血圧の病歴がない患者,② 若年者(45歳未満),③ 皮質下出血では非高血圧性脳出血の可能性を疑い,CTAやMRIなどの追加検査を検討する.また,単純CTの所見から非高血圧性脳出血を指摘できる場合がある.例えば,腫瘍による脳出血では血腫によるmass effectでは説明できないような腫脹を伴い,出血性梗塞では梗塞を反映した血管支配域に一致する低吸収域を背景に血腫が認められる.また,脳動脈瘤による脳出血では血管が走行するくも膜下腔に血腫が接する所見が認められる.このように単純CTから非高血圧性脳出血が疑われた場合にもCTAやMRIの追加を検討する.

図1
図2
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引用文献

  1. 「ここまでわかる頭部救急のCT・MRI」(井田正博/著),pp71-97, メディカル・サイエンス・インターナショナル,2013
  2. 「Osborn’s Brain:Imaging, Pathology, and Anatomy」(Osborn AG, et al, eds),pp81-104, Lippincott Williams & Wilkins, 2012

プロフィール

井上明星(Akitoshi Inoue)
東近江総合医療センター 放射線科
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