画像診断Q&A

レジデントノート 2020年6月号掲載
【解答・解説】腹痛と嘔吐を主訴に受診した80歳代女性

ある1年目の研修医の診断

症状や,胃や小腸にニボーがあることから腸閉塞なんだと思います.原因ははっきりしませんが.

Answer

右閉鎖孔ヘルニア嵌頓による小腸閉塞

  • A1:右閉鎖孔に嵌頓する小腸が確認でき,その壁は造影効果が低下しているように見える(図3).これを起点として,胃から小腸にかけて内腔に液体貯留が目立ち拡張している(図1図2).
  • A2:右閉鎖孔ヘルニア嵌頓による小腸閉塞

解説

国家試験でもしばしば出題される疾患で,キーとなるスライスを提示する本企画ではやさしい症例だったと思われる.しかし実際には頻度はそれほど多くなく,「原因不明の腸閉塞」として処理されることが少なくない.

閉鎖孔ヘルニアは,閉鎖孔の外閉鎖筋と恥骨筋の間に小腸(稀に大腸)が嵌入し腸閉塞を生じる外ヘルニアで,痩せ型の高齢女性,特に経産婦に多い.体表からは触れにくい.鼠径ヘルニアと比べてヘルニア門が小さいため,腸管の一部のみが嵌入するRichter型ヘルニアになりやすく,同時に壁の虚血も生じやすい.また閉鎖孔には閉鎖神経が存在し,嵌入した腸管によって神経圧迫が生じ,必発ではないが大腿から膝にかけての疼痛の訴えを伴うことがある.実際に整形外科を受診することもあるため注意が必要である.

臨床的に何らかの腸閉塞が疑われた場合,CTが施行されることが多い.拡張した消化管を見て「腸閉塞かな」と漫然と考えていると,原因であるヘルニアが存在している尾側の骨盤腔外には注意が及びにくい.さらに拡張腸管の壁は造影効果が保たれていることや,それほど腹水が目立たない症例が多いことから,絶飲食など保存的加療を選択しがちである.しかし本疾患の治療は基本的に手術によるヘルニア門の閉鎖,腸管壊死がある場合には小腸切除も必要となるため,普段から拡張した消化管を見たら,必ず連続性を追跡して,その原因を詳しく検索することが大切である.

なお,本症例はあえて患側とは反対側に大腿骨の手術歴がある症例を提示したが,この疾患の患者はしばしば大腿骨頭置換術や人工股関節置換術後で,CTで閉鎖孔あたりに非常に強い金属アーチファクトを伴っていることがある.そのような場合にも「諦めず」原因を検索する必要があるため,とにかく拡張腸管を追跡する癖をつけていただきたい.

図1
図2
図2
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プロフィール

山内哲司(Satoshi Yamauchi)
奈良県立医科大学 放射線科・総合画像診断センター
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