画像診断Q&A

レジデントノート 2020年11月号掲載
【解答・解説】健診で異常を指摘された80歳代男性

ある1年目の研修医の診断

左中肺野に陰影を認めます.陰影は不整形ですが…何らかの瘢痕でしょうか?

Answer

胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)

  • A1:胸部単純X 線写真では左中肺野に不整形の石灰化陰影を認める(図1).また,左下肺野の心第4 弓に接する小結節影を認める(図1).
  • A2:胸部CT,アスベスト曝露歴の聴取.

解説

胸部単純X線写真では左中肺野に不整形の陰影(図1)を認める.陰影は形状が不整,辺縁明瞭で骨様の透過度低下を示していることから,石灰化陰影と思われた.また,左下肺野に心第4弓に接する小結節が疑われる(図1).胸部CTでは,左胸壁に石灰化を伴う胸膜肥厚斑胸膜プラーク図2)を認め,石灰化の伴わない胸膜肥厚斑も散見された(図2).右横隔膜にも石灰化を伴う肥厚斑を認めた(図示なし).また,左肺舌区に胸膜に接した境界明瞭な9 mm大の結節を認めた(図3).胸膜プラークの存在からアスベスト(石綿)曝露が疑われた.詳しく病歴聴取したところ,若い頃から設計業をしていたが,40歳頃までアスベストを使用する建設現場に立ちあっていたとのことであった.左肺舌区の小結節については,良性結節,転移性腫瘍が鑑別となった.本例はこの後に5年間の経過観察が行われたが,中皮腫や悪性腫瘍の発生は認めなかった.また,その間左肺舌区の小結節影は不変であったため,アスベスト関連肉芽腫性瘢痕と臨床診断した.

胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)は,アスベストの吸入により壁側胸膜中皮下に生じる不規則な板状の肥厚斑である.両側の壁側胸膜や横隔胸膜に非対称性にみられる.通常はアスベスト曝露開始から15 ~ 30年以上を経て認められるようになる.胸膜プラークは高濃度の職業曝露だけでなく,家庭内曝露や工場近隣曝露のような低濃度曝露でも認められ,アスベスト曝露の客観的な所見として重要である.胸膜プラークは特に症状や呼吸機能の著しい低下をきたさないため,治療を要することはない.しかし,アスベスト曝露による中皮腫や肺癌のリスクがあるため,継続的な経過観察が必要である.

図1
図2
図3
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文献

  1. 独立行政法人環境再生保全機構:アスベスト(石綿)とは
    https://www.erca.go.jp/asbestos/what/index.html

プロフィール

大河内康実(Yasumi Okochi)
JCHO 東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
JCHO 東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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