画像診断Q&A

レジデントノート 2024年1月号掲載
【解答・解説】急速に進行する認知機能障害で来院した70歳代男性

Answer

クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)(孤発性)

  • A1:拡散強調像(diffusion-weighted image:DWI).
  • A2:クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease).

解説

クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)は厚生労働省の指定難病(神経・筋疾患)の1つである.年間人口100万人あたり1人の割合で発症し,感染性を有する異常プリオン蛋白が原因と考えられている.CJDには,獲得性(変異型,移植後),遺伝性,孤発性の3つの型があるが,孤発性CJDの頻度が最も高い.

臨床病期は第1~3期に分類される.第1期には倦怠感,活動性低下,物忘れ,失調症状などの非特異的症状,第2期には認知機能の急激な低下,ミオクローヌス,小脳失調,筋固縮,歩行困難が生じる.第3期には無動無言状態から除皮質硬直,屈曲拘縮に進行し,誤嚥性肺炎などの感染症により1~2年で死亡するとされる.治療法は確立されておらず,対症療法が主体である.

画像診断ではMRIが有用とされ,パルスシーケンスのなかでも,FLAIR像と拡散強調像で病変部が明瞭に描出される.特に拡散強調像での異常は臨床症状に先行することがあり,脳波検査や脳脊髄液検査で診断に至らない症例の診断に有用とされる1)それぞれの病型で画像所見が異なるが,本稿では最も頻度の高い孤発性CJDの画像所見について述べる.典型的には,T2強調像およびFLAIR像で大脳皮質と線条体(尾状核および被殻)の腫脹を伴わない高信号域を認める.なお,大脳皮質の病変はcortical ribboningと称されることがある.小脳は萎縮を呈するが,異常信号を認めない.初期段階で病変は左右非対称であり,大脳皮質のなかでも中心溝(Rolando溝)周囲が保たれる傾向がある.

鑑別診断に関して,拡散強調像での大脳皮質の高信号からは,低酸素虚血性脳症,低血糖症,高アンモニア血症,単純ヘルペス脳炎,自己免疫性脳炎,てんかん発作,ミトコンドリア病,血管内リンパ腫症,脳梗塞などが,線条体の高信号からは低酸素虚血性脳症,一酸化炭素中毒,低血糖脳症,高アンモニア血症,てんかん発作などがあげられる2).拡散強調像で高信号を呈する疾患といえば,頻度が最も高い急性期脳梗塞が想起されるが,決して一対一対応ではなく,臨床経過や病変の分布,信号の強さなどすべての情報を総合的に判断する必要があることを認識しておきたい.

図1
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参考文献

  1. Fragoso DC, et al:Imaging of Creutzfeldt-Jakob Disease:Imaging Patterns and Their Differential Diagnosis. Radiographics, 37:234-257, 2017(PMID:28076012)
  2. 藤田浩司:画像によるプリオン病の診断と鑑別診断.臨床神経学,53:1249-1251,2013

プロフィール

井上明星(Akitoshi Inoue)
滋賀医科大学 放射線医学講座
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