外歯瘻は,歯根部,歯周囲または顎骨の慢性化膿性炎症により生じた膿性内容物が顎下部やオトガイ部などの顔面や,頸部の皮膚に瘻孔を形成し,排泄される疾患である.英語では,extraoral fistula,external dental fistula, dentocutaneous fistula,odontogenic cutaneos fistulaなどと表記される.しばしば歯の症状が乏しく,歯の罹患部位から離れた部位の皮膚に病変を形成することから,診断に難渋することがある1).特に瘻孔が不明瞭で,肉芽による炎症性の腫瘤形成が主体で排膿に乏しい場合は,顔面や頸部の皮膚病変や皮下病変を主訴として,皮膚科,耳鼻咽喉科あるいは外科などを受診し,確定診断まで時間を要することがある.また,炎症性疾患として抗菌薬治療を行うも再発をくり返す,生検や切除術が行われるも炎症性肉芽組織が得られるだけで診断に至らないことが経験される2).根治には原因となる歯の抜歯や根管治療もしくは顎骨壊死の掻爬などが必要であり,歯科受診し,原因治療を行うことが求められる.提示症例では,骨粗鬆症に対しビスフォスフォネート製剤(アレンドロン酸ナトリウム水和物)を投与中であり,薬剤関連顎骨壊死(medication related osteonecrosis of the jaw:MRONJ)に感染を合併し,外歯瘻をきたしたと考えられた.
CTでは,歯根部周囲顎骨に骨吸収像および皮膚側の顎骨骨皮質の菲薄化や破壊に加え,そこから皮膚面まで連続する瘻孔を反映した軟部陰影を認める(図1A,B).MRIでは,顎骨やその周囲の筋肉や脂肪織に炎症を示唆する脂肪抑制T2強調画像での高信号変化を認める.造影CT/MRIでは,炎症部位および,膿瘍壁,瘻孔壁が増強され,病変内の性状が明瞭となる.瘻孔や膿瘍を反映した陰影に加え,多方向からの観察で軟部陰影が帯状や円柱状であることや,視診所見と同様に(図2,3),画像所見でも皮膚面に陥凹がみられることは,腫瘍よりも外歯瘻を示唆する有用な所見であると考えられる.
頭頸部の炎症や排膿をくり返す皮膚/皮下の腫瘤では,歯の症状が乏しい場合であっても,外歯瘻の可能性を鑑別にあげ,口腔内診察,必要に応じて画像検査を行い,適切に歯科受診へ導くことが望ましい.