両肺に境界不明瞭な結節影を認めます.発熱,咽頭痛もあり感染性肺炎を疑います.血液検査所見から細菌感染を疑い,血液培養検査を追加し,胸部CT検査を行います.
本症例はLemierre症候群を伴う敗血症性肺塞栓症の症例である.
胸部単純X線写真(図1)では両肺に結節影が多発している.多発結節・浸潤影をきたす疾患として,感染症では敗血症性肺塞栓症,肺真菌症,感染症以外では多発血管炎性肉芽腫症など種々の疾患があげられる.敗血症の存在や感染性心内膜炎の基礎疾患があれば本疾患を強く疑うが,本例ではそのような基礎疾患はない.本例では,左頸部の腫脹に注目し,Lemierre症候群を疑って精査を進めたところ,頸部の造影CT(図3)で合致する所見を認めたため,診断に至った.
敗血症性肺塞栓症は,細菌などの病原体が血行性に散布され,肺に塞栓をきたした状態で局所に膿瘍を形成する.原因となる塞栓子は,菌塊や感染性の静脈血栓が大部分である.感染源としては右心系感染性心内膜炎が多く,敗血症や血栓性静脈炎,カテーテル関連の感染,歯科や外科処置後などでもみられる.症状は発熱,呼吸不全,血痰,胸痛などであるが,自覚症状に乏しいこともある.敗血症性肺塞栓症の診断には画像診断が有用で,胸部単純X線写真では両側多発性に結節影や限局性浸潤影,CTでは末梢胸膜下に辺縁不整な結節を認め,さまざまな程度で空洞化する(図2A→).結節には血管が連続する所見がみられることもあり,feeding vessel signと呼ばれる(図2B→).胸水を伴うことが多い.
Lemierre症候群は,健常若年成人において咽喉頭部領域の炎症に引き続いて頸部に生じる血栓性静脈炎を特徴とし,そこから塞栓子が血流に乗って肺循環に入り,肺に敗血症性塞栓を続発する.稀ではあるが重篤な病態であり,臨床医は必ず知っておくべき疾患である.原因病原体は口腔内常在菌である嫌気性菌が多い.発症早期は咽頭痛や膿性痰,頸部の疼痛や腫脹,胸痛など,非特異的な症状である.
治療は感染と塞栓に対して行われ,抗菌薬と抗血栓薬が主体となる.本症例も抗菌薬治療3週間後に陰影の縮小・消失がみられた.