胆嚢のすぐ下あたりに,腹腔の脂肪がもやもやと濃度が高いところがあって,異常な気がします.ただ胆嚢炎でもなさそうで…それと,この骨盤内にある腎臓みたいな大きいものはなんですか? こんなの見たことないんですが.
春を迎え,医学部を卒業して臨床研修医としての生活が始まった読者も多いだろう.腹痛患者の初期対応では,問診,身体所見と血液検査に加えてCTなどの画像診断が意思決定を左右する場面が早々に訪れる.本稿では,国家試験では扱われる機会が多くない一方,救急外来で遭遇しうる「腎移植後患者の結腸憩室炎」をとり上げる.免疫抑制下では炎症反応や疼痛が目立ちにくいこともあり,臨床所見とともに画像からもしっかりと手掛かりを拾い上げる姿勢が重要である.
憩室は慢性的な便秘などを背景に結腸にしばしば認められるもので,多くは無症候性だが,憩室炎・憩室出血・穿孔の原因となる.憩室炎のCT所見としては,炎症の中心が憩室に一致することを意識しつつ,その周囲に限局した腸管壁の浮腫性壁肥厚,周囲脂肪織の濃度上昇,近傍の腹膜・筋膜の肥厚を確認する.糞石(fecalith)を伴う例も少なくない.さらに,膿瘍形成,穿孔に伴う腹腔内遊離ガス/局所気腫,周囲液体貯留の有無は治療方針に直結するため,特にこれらの点に関して丁寧な読影が求められる.基本的に単純CTでも診断は可能だが,合併症評価や鑑別の観点からは造影CTが有用である.特に右側結腸の憩室炎は虫垂炎と症状が酷似するため,本例のように憩室炎が疑われたとしても正常虫垂を念のため検索しておくことが望ましいだろう.本例のような病歴であれば,右尿管結石症も似た症状を呈するかもしれない.憩室炎の治療は多くが保存的(腸管安静,抗菌薬,鎮痛薬)で,膿瘍形成例ではドレナージや外科的介入が検討される.腹腔内に炎症が生じる疾患であることから,憩室炎に伴う二次性の麻痺性イレウスもしばしば経験されるため,拡張した消化管を認めた場合に「あ,これはイレウスだ!」と早合点せず,その背景に何か炎症性疾患や腫瘍性疾患がないかどうか,丁寧に系統的に読影することが求められる.
本例は腎移植後で,右側骨盤内に移植腎を認める症例であった.本邦において,腎移植は一定の頻度で出会うこともあり,経験のある臨床医であれば見慣れていることが多いかと思う.しかし,それ自体が病的ではないために,教科書や国家試験などであまり画像として紹介されるものではない.そのため「この骨盤内の腫瘤,なんだこれ」「もしかしたら,痛みの原因はこれか?」などと考える読者もいるかと考え,年度の最初,4月号の題材に選んだ.多くの患者さんは,2つ以上の「異常」所見を含んでいる.それらを見つけるだけでなく,どう区別していくか,本コーナーを通して習得していってほしい.