子宮の後ろに何か大きな腫瘤があるので,これが原因かなと思うのですが,膀胱でも子宮でも直腸でもなさそうで,これが何なのか,よくわかりません.
画像診断をテーマとしたコーナーではあるが,本例では「画像を見る前」の鑑別から考えてみたい.現代,読者である研修医の先生たちが勤務する多くの施設で受診者の大半は高齢者であると思われる.当然ながら,類似した症状や病歴であっても,性別や年齢によって想起すべき疾患は異なる.本例は30歳代と若い女性の下腹部痛と嘔気である.消化管であれば,胃腸炎のほか,虫垂炎,憩室炎,大腸がんによる腸閉塞などの鑑別があがるだろう.しかし本例のCT画像では一見,どの臓器とも違う構造が骨盤内(Douglas窩)に認められ,その周囲には腹水が認められた.そのため対応した研修医も,どのように考えればいいか困ってしまったようである.
さて,今回扱ったのは漿膜下筋腫の捻転である.子宮筋腫はとても有名な疾患で,しばしば経験されるが,多くは子宮筋層内に認められる.筋層内の筋腫は,当然ながら捻転などしない.しかし一部の筋腫は子宮漿膜下に発生し,子宮から飛び出したような形態を呈する.頻度は高くないものの,有茎性であることから,この部分は捻転することがあり,急性腹症の原因として経験される.強く捻転すると,捻転部で動静脈が圧排され,最終的には筋腫の虚血・壊死に陥るため,早期の手術加療が推奨される.
症状としては突然の強い下腹部痛で,本例のように嘔気・嘔吐,発熱を伴うことがある.診察上は下腹部の圧痛や腹膜刺激症状,検査では白血球増多やCRP上昇をみることがあるが,いずれも特異的とはいえない.
画像診断では超音波検査も有用だが,特に仰臥位では漿膜下筋腫は背側に位置し,その腹側に消化管が認められることが多いため,しばしば診断に苦慮する.造影CTで子宮との連続性を伴う子宮近傍の腫瘤,腫瘤の造影効果不良(特に茎流入部近傍だけの限局した造影効果),周囲の腹水などが診断の鍵になる.MRIは被曝がなく,上記のような骨盤内の構造がさらに明瞭に描出可能であるため(図3),特に骨盤部の診療を行う際には非常に有用な検査である.学生のころはMRI画像の読影に少し苦手意識があったかもしれないが,初期研修の間に,少しでも見慣れておくといいだろう.