左上肺野の透過性亢進が認められ,血管影が少ない印象です.その原因はよくわからず,精査のため,胸部CT検査を施行します.
本症例は左上区気管支が閉鎖した気管支閉鎖症の症例である.気管支閉鎖症は,葉,区域あるいは亜区域気管支が先天的に閉鎖する異常である.発生機序として,胎生期に気管支原基先端が分離し発育を続けたためとする説や,一時的な気管支動脈の血行障害により気管支の限局的な閉塞が生じたとする説があげられている.
左上葉の後上区枝(B1+2)の閉鎖が最も多く,右上葉や中葉がこれに続き,下葉にみられることは稀である.閉鎖部位より末梢の肺と正常気管支との交通はみられないが,Lambert管やKohn孔など側副路から空気が流入し,過膨張となる.また閉鎖部位末梢の気管支内には排出されない粘液などが貯留し,気管支拡張や粘液栓が認められ,粘液栓は樹枝状や棍棒状,球形となることが多い.
幼児期には喘息や肺炎による症状がみられることがあるが,無症状のことも多い.感染をくり返す場合などは手術が行われる.
本症例では,胸部単純X線写真上,左上肺野の透過性亢進が認められ,肺血管影は疎である.同部では対側と比較し,胸郭が大きく,肋間も開大し,左肺門は下方に偏位し,肺過膨張の所見である.中枢側では拡張した気管支内腔に粘液栓を疑う結節影も認められる(図1B→).胸部CTでは左上区の過膨張がみられ,中枢側の拡張した気管支内腔の粘液栓が確認される(図2A→).斜矢状断では気管支内粘液栓が樹枝状にみられる(図2B→).
本症例は,呼吸状態は良好であったが,病変による感染のリスクを考慮し,左上葉切除術が行われた.術後の経過は良好である.