画像診断Q&A

レジデントノート 2026年8月号掲載
【解答・解説】呼吸困難を主訴に救急搬送された40歳代女性

ある1年目の研修医の診断

左下肺野に浸潤影を認めます.血液検査でも白血球上昇・CRP高値と炎症反応が高く,細菌性肺炎と診断し抗菌薬投与で経過をみます.

Answer

食道癌の気管支浸潤による閉塞性肺炎+無気肺

  • A1:左下肺野の浸潤影がみられる.また,心陰影左縁および下行大動脈左外側縁の輪郭の消失(シルエットサイン陽性),左横隔膜の挙上,気管の左偏位,気管分岐角の開大,左主気管支の狭小化と左下葉支陰影の途絶がみられ,無気肺による容積減少と腫瘍の浸潤が示唆される(図1).
  • A2:閉塞性肺炎を疑い,造影CTや気管支鏡検査にて閉塞原因の特定を行う.

解説

本症例は食道癌の左気管支浸潤に伴う舌区の閉塞性肺炎+左下葉無気肺の症例である.胸部単純X線写真では,左下肺野の浸潤影に加え,無気肺による容積減少を示す複数の所見(図1)や腫瘍浸潤をあらわす所見(図1)が確認できる.① シルエットサイン陽性:心陰影左縁および下行大動脈左外側縁の輪郭が消失しており,左下葉と左舌区の含気消失を示す.② 左横隔膜の挙上:患側の容積減少を反映する.③ 気管の左偏位:縦隔が患側に偏位しており,左肺の含気低下を反映している.④ 気管分岐角の開大:正常では60〜70°とされ,開大は気管分岐下リンパ節腫大を示唆する重要なサインである.⑤ 左主気管支の狭小化と左下葉支陰影の途絶:閉塞機転をあらわし,腫瘍や異物の存在を疑う.これらのX線画像所見を丁寧に読影することで,単純な肺炎ではなく閉塞性肺炎および無気肺,さらにその背景にある中枢気道病変を疑うことができる.

閉塞性肺炎とは,腫瘍・異物・粘液栓などによる中枢気道の閉塞により末梢の換気が障害されて生じる肺炎であり,単純な細菌性肺炎との鑑別が重要である.閉塞性肺炎では閉塞の解除なしに抗菌薬のみでの改善は期待できず,造影CTや気管支鏡検査による閉塞原因の特定が重要である.

本症例では呼吸困難・咳嗽から気管支喘息と診断されていた.胸部単純X線写真の画像所見を見落とさないことが,誤診を防ぎ早期診断につなげるうえで重要である.

原発性肺癌や他臓器からの転移も考慮し造影CTを施行したところ,中部食道の全周性壁肥厚と食道・左主気管支間の脂肪織消失を認め,食道癌の左主気管支への直接浸潤が疑われた(図2).また気管分岐下リンパ節および左鎖骨上窩リンパ節の腫大を認めたが,他臓器への明らかな遠隔転移は認めなかった.気管支鏡検査では左主気管支から腫瘍の露出とそれに伴う気道狭窄を認め(図3),経気管支生検(TBB)を施行したところ扁平上皮癌と診断された.腫瘍マーカーは扁平上皮癌関連のSCC,シフラの上昇を認めた.気道狭窄による呼吸不全のため,気管挿管・人工呼吸器管理のうえ左主気管支に気管ステントを挿入した.上部消化管内視鏡では食道に全周性の2型(潰瘍限局型)進行型食道癌を認めた.気管支への直接浸潤(T4b)および左鎖骨上窩リンパ節転移(N2Mla)を認めることからstage ⅣA期と診断され,化学療法の方針となった.

図1
図2
図3
  • 画像はクリック/タップで拡大します

プロフィール

北村遥嘉(Haruka Kitamura)
国立国際医療センター 呼吸器内科
西村直樹(Naoki Nishimura)
国立国際医療センター 呼吸器内科
おすすめ書籍
  • 9784758127554
  • 9784758124522
  • 9784758127523
  • 9784758127448
  • 9784758110860
  • 9784758124393
  • 9784758127394
  • 9784758127387
  • 9784758124362
  • 9784758124294