常川勝彦
研修医 臨くん
けんさん先生
亜鉛は,成人の体内では1〜2 g存在しており,鉄に次いで2番目に多い必須微量元素だよ.亜鉛の作用は多彩で,亜鉛が欠乏すると,皮疹,口内炎,脱毛,褥瘡などの皮膚症状のほか,成長障害,性腺機能異常や精神症状など,さまざまな症状を呈することが知られているよ1,2).また,肝硬変や糖尿病,炎症性腸疾患,腎不全などさまざまな疾患の患者で血清亜鉛濃度が低下しやすいことも報告されているんだ1,2).亜鉛欠乏の症状で有名なのが,味覚障害だね.低栄養状態の患者では亜鉛が早期に低下して味覚障害を起こしやすく,これが食欲低下を助長して低栄養や病状を悪化させてしまうんだ.また,褥瘡と亜鉛欠乏はとても密接にかかわっているので,褥瘡治療には外用療法だけでなく,亜鉛を補充して体内から効果的に血中の亜鉛濃度を上昇させることが推奨されているよ.そのためにも,亜鉛欠乏を疑ったらすぐに血清亜鉛濃度を測定することが大切だね.日本臨床栄養学会では,60〜80 μg/dLを潜在性亜鉛欠乏,60 μg/dL未満を亜鉛欠乏症と定義しているよ(表2)1).