総合診療はおもしろい!

ジェネラリストが取り組む研究とは?
津田修治(浜松医科大学健康社会医学講座,静岡家庭医養成プログラム,菊川市家庭医療センター)

若手の総合診療医・家庭医たちが後期研修の前後から臨床と並行して,社会人大学院などで研究を進めている話を見聞きします.筆者も社会人大学院生として公衆衛生の研究室に週1回通っています.そこで感じたこと,学んだことをまとめてみたいと思います.

多岐にわたる研究テーマ

世の中にはさまざまな研究テーマが存在し,まずはそれを考えることからはじまります.臨床の仕事をするなかで,どんな問題意識を感じていますか? 深めたい領域は何ですか? 社会的な要請は? このような問いかけから研究テーマを考えます.例えば,テーマの取っ掛かりとして,「アトピー性皮膚炎の小児がステロイド外用しない理由として,子の要因,親の要因,何だろうか」,「虚弱高齢者の再入院を回避するにはどんな医療システムや介入が効果的なのだろう」などです.ジェネラリストが取り組む研究テーマは,検査や薬,疾患など生物医学的な内容にとどまらず,医療者や患者・家族の心理や価値観,関係性についてであったり,医療システムの効率や費用対効果など社会的なテーマであったり,多岐にわたります.参考文献1)は,ジェネラリストが取り組むテーマについてとても包括的できれいにまとまっていますので,ぜひご一読をお勧めします.研究テーマのなかで,先行研究を調べながらリサーチクエスチョンを簡潔な言葉にして,より具体的な研究計画を作成し,研究を進めていくことになります.

研究の魅力とは?

「研究」と聞くと,「あの苦手な医学統計かぁ…」と学生時代のトラウマが思い起こされる方もいるのではないでしょうか.確かに,論文抄読会などで馴染みのあるコホート研究やランダム化比較試験のような量的研究が代表的です.しかし,定量的な結果からは見えてこない事象について,インタビュー記録を文字に書き起こしたデータなどを分析する質的研究もあります.例えば,認知症患者を介護する家族の心理や負担感などは,質問紙でスコア化して評価・分析(量的研究)も可能ですが,地域社会の「親を介護するのは当然だ」というような文化的要素や,良好な嫁姑関係から「義母の面倒をみるのは自分の務めだ」というような個人の考えなど,より個別性の高い要素が深くかかわっていることが予想され,これを分析(質的研究)することもあり得ます.問題意識をもつテーマに取り組み,掘り下げ,深い理解にたどり着き,解決への糸口を探し,その領域の知見を少しでも前に進めて日本や世界のプライマリケアに貢献する,これが研究の最大の魅力だと思います.

何を学ぶか? 何を身につけるか?

ジェネラリストは診療や教育で活躍するイメージが強く,研究というイメージはあまりないかもしれません.しかし,筆者が知るだけでも多くの若手家庭医・総合診療医たちが研究を学んでいます.研究をして何を学び,何を身につけるか? ① 業務改善やプロジェクトなどを企画・実行する力,② 情報を収集して理解し,科学的に分析する力,③ 計画や結果を文書にまとめ,プレゼンして発信する力,④ 知識だけでなく,多面的な見方や洞察力なども含めた臨床の力,このような4つが身につくと筆者は考えます.これらの力は,地域で活躍するジェネラリストとして,大きなアドバンテージになるのではないでしょうか.

たいそうに書いてきましたが,翻って筆者自身は夏休みの自由研究でさえも面倒くさがったのに,研究をやり遂げられるか.これからが正念場です.

参考文献

  1. Stange KC, et al:Developing the knowledge base of family practice. Fam Med, 33:286-297, 2001
明日からの日常診療の質がかわる21の新常識を身につける!

レジデントノート増刊 Vol.22 No.8
日常診療の質が上がる新常識
疾患、治療法、薬剤など明日からの診療が変わる21項目

仲里信彦/編
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