総合診療はおもしろい!

アットホームな国際学会,WONCAへの参加で得られたもの
渡邊 功(飯塚頴田家庭医療プログラム)

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2018年度より日本ではじまった新専門医制度では19番目の基本領域の専門医として「総合診療専門医」が確立され,これからプライマリ・ケアの担い手が多く育っていくことが期待されます.家庭医,総合診療医の最も大規模な国際学会が世界家庭医療機構(World Organization of Family Doctors:WONCA)の学術大会です.この度,私は2018年10月17〜21日にソウルで開催されたWONCA学術大会に参加しましたのでご報告します.

Young Doctors' Pre-Conference

WONCAの正式な開会前日に行われる,若手医師による1日セッションです.各国の若手家庭医自治組織であるYoung Doctors' Movementの紹介にはじまり,ワールドカフェ形式のワークショップで家庭医について語り合うセッションが行われました.中でも後述するSpecial Interestについては各国の家庭医からさまざまな意見が寄せられ,家庭医としての道の可能性に心が躍りました(写真).セッションが終わるとソウル最大の王宮である景福宮への観光ツアーと伝統焼肉を囲んでの懇親会が行われました.懇親会では6〜7人ごとのテーブルでじっくり懇親を深めることができ,後につながる交友関係ができました.

WONCA

世界学術大会と聞くと敷居が高く感じますが,WONCAは非常にアットホームでありながらチャレンジを歓迎する場所でした.拙い英語も決して批判なく耳を傾けてくれるし,各国のFamily Doctorが抱える課題と展望を語り合うことのできる貴重な機会です.会期中は毎日多数のセッションや基調講演,懇親会があり,5日間の会期は忙しくあっという間に感じられました.WONCAへの若手の参加は,以下の3つの点から特にお勧めしたいと思います.

世界の若手家庭医がもつ多様なSpecial Interest.

① 言語化

普段自分がやっていることを改めて人に説明すると,何が同じで何が違うのかを学ぶことができます.さらにそれを英語で行うことでより端的に言語化する訓練となり,そのスキルは後輩のリクルートや教育に役立つことが期待できます.

② 国際交流

セッションでもワークショップ形式のものが多く,また公式の懇親会も複数あるため,各国の家庭医との交流を深め,次につながる人脈づくりが可能です.家庭医を志す若手医師はアイデンティティに不安や迷いを抱くことも多いといいますが,国際的に同じ志をもって生き生きと働いているFamily Doctorと交流することで,アイデンティティがより確かになるに違いありません.

③ Special Interestの発見

家庭医のなかでも特に自分の得意とする分野=Special Interestをもつ人もいます.WONCAの組織内には多分野のインタレストグループがあり,それらが主催するセッションも多数ありました.グローバルスタンダードに触れるよい機会であり,新しいSpecial Interestの発見の場にも,すでにもっているInterestを深める場にもなり得ると思います.

今回のWONCAには日本の学生や初期研修医の参加者もいました.また2019年5月にはWONCA アジア太平洋地域学術大会(Asia Pacific Regional Conference:APRC)が日本の京都にて開催されます.国内での開催はまたとない機会です.あなたも少しでもプライマリ・ケアに興味があれば,足を運んでみてはいかがでしょうか?

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