われわれは,全く新しいタイプのピンポイント遺伝子治療用ナノキャリアとして,ウイルス由来のタンパク質を利用した中空バイオナノ粒子を考案した.ウイルスのなかでも,B型肝炎ウイルス(hapatitis B virus,以下HBV)が肝臓のみに特異的かつ効率よく感染する能力を有することに着目し,B型肝炎ウイルス表面抗原からなるタンパク質のナノ粒子(「中空バイオナノ粒子」と呼ぶ)を目的臓器への能動的なピンポイント遺伝子導入を可能とするナノキャリアとして利用しようというものである.本稿では,中空バイオナノ粒子の概念,その製造や物性と,がん遺伝子治療への応用について紹介する.