実験医学 2012年3月号 Vol.30 No.4

死細胞による生体恒常性の維持機構

非アポトーシス経路の最新知見と細胞死からはじまる増殖・炎症・免疫応答のメカニズム

  • 米原 伸,中野裕康/企画
  • 2012年02月20日発行
  • B5判
  • 123ページ
  • ISBN 978-4-7581-0081-6
  • 定価:2,200円(本体2,000円+税)
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》

細胞死研究は,アポトーシス誘導の分子メカニズムや,その実行因子であるカスパーゼやBcl-2ファミリー分子の生理的および病理的な役割がほぼ解明され,現在大きな転換期を迎えつつある.本特集はこのような状況のもとに現在細胞死研究の領域において活発に研究されている非アポトーシス細胞死および死細胞による生体の恒常性維持機構について焦点を絞り,最新の知見について紹介してもらうことで,今後の細胞死研究の方向性を示したものである.これまで知られていたアポトーシスを代償する新たな細胞死のメカニズムや,死細胞を起点とした多細胞コミュニティーの維持,そしてそれらの破綻により生じる病態の解明は,これまでの細胞死研究を超えて,発生や組織修復から免疫,炎症性疾患,がんに至るまで,実に多彩な研究領域へと波及しつつある.

死にゆく細胞が残す“メッセージ”とは?死細胞の多彩な認識・貪食機構から細胞増殖・組織修復における役割,その破綻がもたらす病態の理解まで,新規な細胞死シグナル経路の最新知見とともにご紹介します!

目次

特集

死細胞による生体恒常性の維持機構
非アポトーシス経路の最新知見と細胞死からはじまる増殖・炎症・免疫応答のメカニズム
企画/米原 伸,中野裕康
細胞死研究を超えて【中野裕康/米原 伸】
細胞死研究は,アポトーシス誘導の分子メカニズムや,その実行因子であるカスパーゼやBcl-2ファミリー分子の生理的および病理的な役割がほぼ解明され,現在大きな転換期を迎えつつある.本特集はこのような状況のもとに現在細胞死研究の領域において活発に研究されている非アポトーシス細胞死および死細胞による生体の恒常性維持機構について焦点を絞り,最新の知見について紹介してもらうことで,今後の細胞死研究の方向性を示したものである.これまで知られていたアポトーシスを代償する新たな細胞死のメカニズムや,死細胞を起点とした多細胞コミュニティーの維持,そしてそれらの破綻により生じる病態の解明は,これまでの細胞死研究を超えて,発生や組織修復から免疫,炎症性疾患,がんに至るまで,実に多彩な研究領域へと波及しつつある.
プログラムされたネクローシス―その実行メカニズムと生理的意義【黒木俊介/米原 伸】
プログラムされた細胞死は個体発生や組織の恒常性の維持に重要な役割を担っている.長年プログラム細胞死の研究はアポトーシスが中心だったが,近年非アポトーシス型の細胞死の研究が盛んになっている.本稿では,非アポトーシス型細胞死のなかでも,最近実行因子が特定され現在最もホットな話題である「プログラムネクローシス」について概説する.
オートファジー細胞死の分子機構とその生体での役割【清水重臣】
自己構成成分を分解するシステムであるオートファジーは,多くの場合は生に貢献するために機能している.しかしながら,細胞に強い刺激が加わると,過剰なオートファジーとともにJNKが活性化され,オートファジーを介した細胞死が実行される.このオートファジー細胞死は,アポトーシスの代替機構として傷害細胞や不必要な細胞の処理を担っている.また,オートファジー細胞死の変調は発がんを惹起するものと考えられる.
死細胞貪食による免疫制御機構【浅野謙一/田中正人】
マクロファージは組織ごと,また同一組織内でも複数の亜集団が同居する多様な自然免疫細胞である.しかしながら,マクロファージ亜集団の科学的分類は未だ確立しておらず,個々の役割もよくわかっていない.CD169を発現するマクロファージは,組織と血流やリンパ流が接する領域に少数存在し,流入する死細胞を貪食する.さらに貪食した細胞の死の様式に応じて異なる免疫応答を惹起する能力をもつ.このCD169マクロファージの免疫制御機能を活用することで,自己免疫疾患やがんに対する新しい免疫療法を開発できる可能性が高まってきた.
死細胞による免疫応答とDAMPs【清武良子/山崎 晶】
免疫応答の基本原則は,自己と非自己の識別に基づく非自己病原体の選択的排除である.ところが,生体はしばしば過剰な死細胞などの「有害な自己」にも遭遇する.これらを適切に排除するため,損傷細胞から免疫応答,ひいては組織修復を惹起するような内因性因子が放出されることがわかってきた.近年,DAMPs(damage-associated molecular patterns)と総称されるこうした因子と受容体の実態が明らかとなりつつある.本稿では,新たなDAMPs受容体と生体の危機応答について概説する.
細菌感染による能動的細胞死とインフラマソーム【須田貴司】
マクロファージは細胞内への病原体の侵入を感知すると,インフラマソームとよばれるタンパク質複合体を形成してカスパーゼ1を活性化し,IL-1βやIL-18などのサイトカインを分泌して炎症・免疫応答を誘導するとともに,パイロプトーシスとよばれるカスパーゼ1依存性の細胞死を起こす.よく似た状況でヒト単球細胞はパイロネクローシスとよばれるカスパーゼ1非依存性の細胞死を起こすと報告されているが,われわれはこの細胞死もカスパーゼ1依存性であることを示した.パイロプトーシスやパイロネクローシスは形態的にはネクローシスの特徴を示す細胞死で,アポトーシスとは異なる炎症誘導性のプログラム細胞死と考えられる.
死にゆく細胞による増殖制御―代償性増殖の分子基盤とその生理的意義【井垣達吏】
死にゆく細胞が代償的にその周辺細胞の増殖を促す「代償性増殖」は,約30年前にショウジョウバエで発見され,いまその分子メカニズムが明らかにされつつある.代償性増殖は,細胞の死を起点とした多細胞コミュニティー制御という新たなパラダイムを担う機構の1つとして,その普遍性と多様性,さらには正常発生やがん制御における役割が注目されつつある.
細胞死に伴う酸化ストレスによる生体の恒常性維持機構【仁科隆史/中野裕康】
最近の細胞死研究の進歩により,死細胞が単に貪食排除されるだけではなく,さまざまな因子を放出することで生体の恒常性維持に関与していることが明らかとなってきた.一方で細胞死に伴い酸化ストレスが誘導されることが知られているが,発生する活性酸素種(ROS)が単なる有害物質として疾病の発症や増悪に関与しているだけでなく,さまざまな生理的なシグナル伝達機構の誘導を介して生体の恒常性維持にかかわっていることが近年明らかとなってきた.本稿ではROSによる生体の恒常性維持機構についての最新の知見を紹介したい.

トピックス

カレントトピックス
R-Smad脱ユビキチン化酵素USP15によるTGFβシグナル制御【乾 雅史/Andrea Manfrin/Stefano Piccolo】
細胞老化を誘導するDNA 損傷シグナルはAPC/CCdh1を介してヒストンメチル化酵素の分解を誘導する【高橋暁子/今井良紀/原 英二】
NMN(nicotinamide mononucleotide)が与える新しい栄養学的糖尿病治療法の可能性【吉野 純/今井眞一郎】
線虫受精卵における父性ミトコンドリアのオートファジーによる選択的分解【佐藤美由紀/佐藤 健】
News & Hot Paper Digest
次世代DNAシークエンサーの品定め【養王田正文】
体内コミュニケーションを利用したがんターゲティングナノ粒子のデザイン【田畑泰彦】
がんのシステムバイオロジー【八尾 徹】
ペンシルバニア大学Biomedical Postdoctoral Programsでのトレーニング【井尻貴之】
FDA,インターネット上でのオフラベル情報提供について方針を発表【MSA Partners】

連載

クローズアップ実験法
高感度に多型を検出するためのエキソーム・シークエンシング【舟山 亮/長嶋剛史/中山啓子】
誌上留学! ―ラボ英会話のKEY POINTS >>> Web留学編へ
染まるや,染まらざるや ―説明をうながす【浦野文彦/Christine Oslowski/Marjorie Whittaker】
【最終回】バイオテクノロジーの温故知新
蛍光イメージング技術【宮脇敦史】
連載を終えるにあたり【村松正實】
絵で見る先端分子生物学
RNAポリメラーゼの構造から見えるインフルエンザの特効薬【解説:胡桃坂仁志/絵:松本亮平】
Campus & Conference探訪記
がん研究者の寺子屋 in 蓼科 ―第12回がん若手研究者ワークショップ【原 敏朗】
ラボレポート ―留学編―
平凡なポスドクの裏技 (?) 留学 ―Department of Biology, Stanford University【水本公大】
Opinion ―研究の現場から
若手研究者のお財布事情【谷 友香子/一条美和子/前廣清香】

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