クローズアップ実験法

2023年6月号 Vol.41 No.9 詳細ページ
Direct-TRI とLasy-Seq を用いた低コスト・ハイスループットなbulk RNA-seq
鹿島 誠,平田普三
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Direct-TRIとLasy-Seqを
用いた低コスト・ハイスルー
プットなbulk RNA-seq
鹿島 誠,平田普三

何ができるようになった?
RNA-Seq は非常に強力なアプローチであるが,手間とコストがかかる手法であり,日常的な使用
や大規模な遺伝子発現解析の実施は困難であった .われわれは ,独自の技術群 (RNA 抽出法:
Direct-TRI,ライブラリー調製法:Lasy-Seq)を組合わせることで,低コスト・ハイスループット
な RNA-Seq を実現した.

必要な機器・試薬・テクニックは?
一般的な分子実験機器に加えて,Direct-TRI には,スイング式で 56 mm の高さのプレートを遠
心可能な遠心機を必要とする.Lasy-Seq は,マルチプレックス数種類分の index 付き dT プライ
マー,qPCR 装置,精製用マグネット,蛍光ベース核酸定量装置を必要とする.

はじめに

リー調製法は,複数段階の酵素反応を検体数分だけ独

ほとんどの生命現象の変化は遺伝子発現の変化を伴

立に行う必要があり,費用・手間の両面で,多検体化

う . そのため , 全 遺 伝 子 の発 現 情 報 を取 得 する

が困難であった.本稿では,これらの課題をクリアす

RNA-Seq は,網羅性と定量性を高いレベルで兼ね備

るためにわれわれが運用している独自技術群〔RNA 抽

えた優れた研究手法である.しかし,次世代シークエ

出法「Direct-TRI」1)と 3 ′RNA-Seq ライブラリー調

ンサー(NGS)の進歩によりシークエンスコストが下

製法「Lasy-Seq ver. 1.1(ver. 1.0 よりも二本鎖 cDNA

がったとはいえ,RNA 抽出とライブラリー調製にかか

断片化反応を頑健化)
」2)3)〕について紹介する.本手

る手間と費用が,日常的な RNA-Seq の利用の妨げに

法により,RNA 抽出からシークエンスを含めて 3,000

なっていた.RNA 抽出では,フェノールクロロホルム

円 / 検体での解析が可能となる.

法では慎重なピペット操作が要求され,多検体処理は
困難である.一方で,RNeasy などのシリカカラムベー
スの手法では複雑な操作がなく多検体化が容易な反面,

原理

フェノールベースの手法に比べて収量が少なく,コス

Direct-TRI は Direct-zol™(Zymo Research 社)を

トもかかる.また,TruSeq などの一般的なライブラ

参考に開発した手法であり,酸性グアニジンチオシア

Direct-TRI and Lasy-Seq: cost-effective and high-throughput RNA-Seq techniques
Makoto Kashima/Hiromi Hirata:Department of Chemistry and Biological science, College of Science and Engineering
Aoyama Gakuin University(青山学院大学理工学部化学・生命科学科脳科学研究室)
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実験医学 Vol. 41 No. 9(6 月号)2023
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