クローズアップ実験法

2024年3月号 Vol.42 No.4 詳細ページ
市販の酵素を混ぜるだけの相同組換えDNAクローニング
Alexander Y. Liu,古賀大翔,合屋智尋,北畠 真
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市販の酵素を混ぜるだけの
相同組換えDNAクローニング
Alexander Y. Liu,古賀大翔,合屋智尋,北畠 真

何ができるようになった?
プラスミドを作製する際にしばしば使われる「相同組換え DNA クローニング」
.高価なキットを買
わずに,安価な市販の酵素で代用する方法を紹介する.

必要な機器・試薬・テクニックは?
PCR を行うためのサーマルサイクラーを反応に使用する.市販の酵素を希釈して組合わせるだけで
よく,学部生の初心者でもうまく使いこなせている.

はじめに

(Seamless Ligation Cloning Extract)
」法であった 3).

遺伝子断片をプラスミドに挿入する「DNA クローニ

これは大腸菌を界面活性剤で処理するだけで相同組換

ング」は ,分子生物学の研究に不可欠の技術である .

え活性をもつ溶液が得られる,という驚くべき方法で

1973 年に「制限酵素」と「D N A リガーゼ」を用いる

ある.北畠は Liu ら iGEM 4)Kyoto の学生たちとこの方

近代的な方法が開発されて以来,50 年にわたってこの

法を使用するうちに,この方法が安定してうまくいく

方法は多くの研究室で使われ続けてきた.このような

わけではないこと,保存しているうちに活性が失われ

状況は 2009 年に「相同組換え」を利用した方法が発表

やすいこと,などの問題に気がついた.学生たちとこ

されると同時に,大きく変化した.

の SLiCE の活性成分を調べていくうちに,市販の酵素

現在では相同組換えクローニング用のキットが市販

を混ぜるだけできわめて安価に SLiCE を再構成できる

されており,誰でも簡単に目的のプラスミドを作製す

ことに気づいたのが今回の方法 5)である.なお,iGEM

ることが可能になっている 1)2).唯一の問題は,これら

(The International Genetically Engineered Machine

のキットが比較的高価であるということである.通常

competition)とは学部生の研究チームによる合成生物

1 回の反応に少なくとも 1, 000 円程度が必要とされる .

学の世界大会 (生物版の 「ロボコン」のようなもの)

これは資金に余裕のある研究室から見れば大きな金額

で ,今回紹介するプロトコールは京都大学のチーム

ではないが,筆者(北畠)のように資金の逼迫した研

i G E M K y o t o との共同研究の過程で生まれたもので

究者にとっては無視できない金額である.このような

ある.

研究者からこれまで頼りにされてきたのが ,「S LiCE
Easy homologous recombination DNA cloning with pre-made commercial enzymes
Alexander Y. Liu/Hiroto Koga/Chihiro Goya/Makoto Kitabatake:Institute for Life and Medical Sciences(LiMe), Kyoto
University(京都大学医生物学研究所)
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実験医学 Vol. 42 No. 4(3 月号)2024
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