研究成果を社会に還元することは,研究者にとって重要な役割の1つです.そんななか近年,研究者のキャリアパスにおいて,起業が重要な選択肢の1つとして注目されています.起業をすると,多様な人的資本や物的資金の調達手段を得るだけでなく,アイデアを社会実装する過程で,実社会からフィードバックを受ける機会が生まれます.アカデミアのなかで見過ごされがちな実用的な研究課題の解決につながり,応用研究にとどまらない,革新的なイノベーションの創出につながることが期待されます.さらに,研究者自身の社会実装を視野に入れた事業視点が求められるため,実社会のニーズに即した研究のトレーニングの場ともなります.欧米では,研究者がスタートアップを立ち上げ,資金調達する動きが活発ですが,日本はまだ十分に浸透していません.これは日本にプレーヤーが少なく,企業,投資家,研究機関,支援機関(政府・アクセラレーターなど)が連携して成長を促す環境(エコシステム)が整っていないことが要因の1つと考えられます.
.....
DOI:10.18958/7721-00004-0001913-00